日銀の2月14日のバレンタイン緩和について

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 9

最近、金融政策の分野で動きがありました。2月14日に日本銀行が、円高デフレ脱却対策として、年率1%の物価上昇を当面の「目途」(めど)とすることを決めたのです。資産買い入れ基金の10兆円増額による「追加金融緩和」も同時に決めました。

このことは内外で「日銀が事実上のインフレ目標政策導入」と報道されました。

これまで、ほとんど無策だった日銀が重い腰を上げたのは、われわれ国会議員有志の働きかけもありますが、それ以上に、1月25日に米連邦準備制度理事会(FRB)が年率2%のインフレ目標を明示したことに焦りを感じたためです。

円高デフレ脱却をめざして活動する我々もFRBに力づけられました。民主党の国会議員有志で構成し、私が事務局長を務める「デフレ脱却議連」は、さっそく2月3日に総会を開き、「日本でもインフレ目標を導入すべき」との提言を持ち政府・与党などに働きかけを強めることを確認しました。なお、議連の会長には、松原仁氏が国家公安委員長兼拉致問題担当大臣になったため、池田元久・前経済産業副大臣(神奈川6区選出)が就任しました。

この1月25日以降、永田町の潮目は変わりました。自民党、公明党など野党の議員からも日銀法改正とインフレ目標導入を求める声が大きくなり、いよいよ日銀は追い込まれたのです。

2月14日の日銀による「インフレ目標」の導入後、わずか数日で円は1ドル=76円から79円に下がり、日経平均株価も9000円から9500円へと急騰しました。一方で、長期金利は上がりませんでした。これまでの日銀やとりまきの学者たちの主張とは正反対に、「インフレ目標」政策が景気回復に大きな効果があることが判りました。

実は、今回の日銀の決定は、私から見れば、まだまだ不十分です。FRBとはまるで違う”なんちゃってインフレ目標”とでも言いたくなります。

まずは目標値が「1%」というのは、あまりに低すぎるからです。年率1%なら実質的なデフレでも、消費税の5%から10%への引き上げだけでも、形の上では実現されてしまいます。2~3%というマイルドなインフレを目標とする必要があります。

ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンをはじめとする海外の一流経済学者からも既に指摘されていることですが、一番問題なのは、日銀の政策実行の意志に疑問符がついている点です。なにしろ、白川方明総裁は、FRBがインフレ目標を明示して間もない2月6日の参院予算委員会で、「(FRBの)バーナンキ議長自身もこれはインフレーションターゲットではないと言っている」、「むしろFRBが現在日銀が行っている政策に近づいてきたと」などと、少し調べればすぐに事実ではないことがわかる発言をして、必死に日本でのインフレ目標導入に予防線を張っていたのですから。
政治の圧力をかわすためだけのインフレ目標ならば、まさに「仏作って魂入れず」。実効性を期待できるはずもありません。

日銀による平成12年(2000年)のゼロ金利解除、平成18年(2006年)の量的緩和解除は、ともに景気が回復するよりも余りに早く金融を引き締めてしまった失敗です。いまだにこれらのミスについて、日銀は責任を認めようとしません。ポール・クルーグマンは、コラム「さらに日本について」で次のように書いています。

「日本銀行は2002年から2007年にかけての比較的によかった時期を利用してデフレから脱却しなかったことでその任務に失敗した。2008年に危機がおきたときにもまだデフレ経済だったことで、日本は必要以上に大きな痛手を被ることになってしまった」

今回の日銀の決定についても、いつまでにデフレから脱却するのかという期限も示していませんし、達成できなかった時にどう責任をとるかについての定めもありません。白川総裁が「石にかじりついても――」という強い意志を持ち、金融緩和に本気でコミットしない限り、市場参加者は近いうちに、みせかけの「インフレ目標」政策の催眠術から覚め、今の円安、株高も元に戻ってしまうでしょう。

こうした事態を避けるためにも、米国のように中央銀行が「雇用の最大化」に責任を持ち、また政府が目標を決めて日銀に指示する形で金融政策が行えるよう、日銀法を改正する必要があります。デフレ脱却議連では日銀法の改正も目指しています。

なお、今回の日銀による「インフレ目標」政策に対する詳細な評価については、近日中にあらためて書きたいと思っています。

日銀が不十分ながらも「インフレ目標」を掲げ、景気回復への機運が上向きかけている一方で、政府と党執行部は、消費増税に向かって一直線という困った事態になっています。

昨年末の党内での税制論議の際、民主党国会議員有志で「消費増税を慎重に考える会」を発足させ、会長は田中けいしゅう衆議院議員(神奈川5区選出)、私は自ら事務局長となり活動してきました。その一環として、2月10日には前原誠司政調会長に要請活動を行いました。

税率アップの前提とされている「経済状況の好転」について、その判断基準となる指標を数値で明示すべき――などとする要請文を前原氏に手渡し、慎重な対応を強く求めました。前原氏からは「デフレ脱却のために、政府が日銀とアコード(協定)を結ぶ必要がある」との発言がありました。

2月17日、政府は、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革大綱を閣議決定しました。ご存知の通り、現行5%の消費税率を平成26年(2014年)4月に8%、平成27年(2015年)10月に10%に引き上げるとの内容です。

何度も繰り返すようですが、私は消費増税に未来永劫、反対というわけではありません。ただ、日本経済が青色吐息の今は増税すべきではないのです。不況下では、税の転嫁もできませんし、さらに景気が悪化してしまいます。円高デフレからの脱却を何よりも優先しなくてはなりません。

私はもちろん諦めてはいません。大綱はまだ法案ではありません。前回のメールマガジンでも書きましたが、景気の善し悪しを具体的にGDPデフレーターなどの経済指標で判断して税率引き上げの可否を判断する「弾力条項」を法案に何とか入れ込み、拙速な税率アップに待ったをかける必要があります。

日本経済の回復には、まだまだ厳しい道のりが続きますが、「経済のスペシャリスト」として皆さまに支持され、国会議員となった責任を忘れず、頑張っていきます。

(メールマガジン平成24年2月24日号より)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする