消費増税の逆進性対策には給付付き税額控除を!

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消費税の逆進性対策、悪影響対策には、政府が考えているような一時的な補助金などの政策でなく恒久制度が必要です。このためには、食料品の軽減税率などではなく、毎年数兆円単位の予算で、低所得者に対して家族構成に応じ税務当局から直接払い戻しする「給付つき税額控除」が最適です。これは私が10年前から当時の民主党などで講演し、提唱してきたものです。子どもを大人の半分の金額にするなど具体的制度設計は、9年前の民主党の部会での説明資料になりますがカナダの例を下のPDFでご覧ください。

(なお、上のアイキャッチイラストは「いらすとや」さんによるものです。)

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taxcredit-canada02

給付つき税額控除:カナダの事例

平成21年4月1日

1.消費税の逆進性
• 消費税に対する不人気の原因は、税に対する負担感と、逆進性。
• 実収入が多い家計ほど、消費の割合が下がることによって支払う消費税負担の割合が下がる。この現象を逆進性と呼ぶ。
⇒政策当局者に求められることは、なんらかの手段で消費税自身について所得に対する累進性を強化することである。

2.食料品等の軽減税率の欠点
• EU諸国は、標準税率を15%以上とする一方で、その多くが生活必需品に対して軽減税率を適用している。
• 付加価値税間接税を導入している先進国中、食料品への軽減税率が導入されていない国は、我が国を除けば、韓国、デンマーク等のみと極めて少なくなっている。
• しかし軽減税率は、税の負担「率」の是正には効果があるものの、減税による絶対額では結果的に低所得者層よりも高所得者層に負担「額」の減少というメリットが多くなってしまうという根本的欠陥がある。

3.カナダの間接税(GST)制度
Goods and Services Tax
• 我が国の消費税と極めて似た性格を持つ連邦財サービス税GST: Goods and Services Tax
• 間接税については、連邦税は5%、州税は州ごとに決定。
• 食料、医療サービス、処方箋による医薬品、住宅の賃貸料などのかなり広範囲な免税・ゼロ税率品目がある。⇒この点については日本と同様
• 税務申告に社会保障番号を利用。

4.GST控除制度の概要
Goods and Services Tax credit
• GST控除制度:連邦財サービス税GSTの税収の一部を、低所得者に対して、家族構成に応じ税務当局から税額控除として小切手で直接払い戻し、間接税の負担を軽減することが目的。
• 労働力供給の促進など、その目的はそれぞれ異なるものの、給付つき税額控除方式は各国で導入されている。カナダでは、間接税の逆進性に対応する目的でGST控除制度が導入された。

5.GST控除給付模式図
(夫婦+子ども2人)

6.給付つき税額控除としての特徴
• 勤労促進的なフェイズイン部分がなく、はじめから満額給付される。
• 還付金方式であり、社会保険料などとの相殺はない。
• 社会保障番号(=納税者番号)の利用が行政コストの低減に貢献している。
• 財政黒字を背景に、他に、児童手当などが存在する。

7.GST控除制度:申告方法
• カナダでは国民の約七割が税務申告を行っているが、その税務申告書のp.1にある「GST/HST控除を申請する」旨の欄にチェックするだけで申請できる。
• 給付は年4回に分割され、連邦政府から直接、小切手または銀行送金で行われる。
• 還付の対象:910万人⇒税務申告をした者の37%。

8.GST控除制度:給付額
• 給付額(2008年7月から2009年6月給付分:2007年納税申告)
• 有資格本人 年間$242(≒19,000円)
• 配偶者  年間$242
• 子ども一名につき 年間$127(≒10,000円)
⇒夫婦と子ども二人の世帯で年間$738(≒58,000円)
(1カナダドル = 78.9円 11月25日現在)

9. GST控除制度:受け手の世帯所得
• 年間所得が2万カナダドル以下の世帯はほとんどすべてがGST控除の受け手となっている。
• 2万カナダドルから3万9999カナダドルについては90%程度が受け取っている。その後漸減し、6万カナダドルから7万9999カナダドルの世帯については24%となるが、その後は微増し、10万カナダドル以上の世帯についても33%が受け取っている。⇒世帯当たりの人数の関係

10.GST控除制度:
所得再分配に与える影響
• 2003年においてGSTによる歳入は306億カナダドル(≑2兆4千億円)、約一割に相当する29億カナダドルがGST控除として還付。
• 課税前の総所得は1年間に7647億カナダドルであり、GST控除給付は政府による所得移転の約5%であり、給付を受け取る家計にとってその総収入の1%に過ぎない。(受給世帯の平均受取額は389カナダドルと低額である。)
⇒GST控除給付額は小額であるため所得再分配にはあまり影響を持たない。

11.カナダ間接税制度の改善
OECD:Economic Survey of Canada 2008による
• 免税処置は徴税などにかかるコストが極めて高く、高所得者層に対しても低所得者層に対しても同様に還付してしまうことから、税額控除による還付と比較して望ましくない。
• 現在の食料品に対する免税措置を廃止し、それによって生じる分配の不平等に対してはGST控除をさらに強化することで対応すべき。

12.まとめ
◎低所得者のみをターゲットに給付ができる。
◎消費税の逆進性を完全にオフセットできる。
◎子育て給付など他の政策目的にも利用可能。
○この制度に限らないが、若い世代の低資産低所得者と年金世代のように高資産低所得者を同じ扱いにしていいかどうか。
○他の給付つき税額控除制度と同様、実施には納税者番号制度が必要。