附則18条(景気条項)は増税派への時限爆弾

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消費増税法案には「附則第18条(注)」がある。これは民主党政権時、党内の法案審議のなかで、「デフレ不況から脱却していない今はまだ消費増税をすべきではない」と考えたわれわれ増税反対派が、財政緊縮に前のめりの執行部と対決して、当時の前原誠司政調会長に直接申し入れるなどして採用させたものだ。

その内容は、一年間の名目経済成長率で3%程度かつ実質経済成長率で2%程度の経済成長を目指し経済運営を行うことと、消費増税を決定する前に「経済状況などを総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」ものだ。つまり、景気がよくないと判断される場合には、増税を見送るという「景気条項」が盛り込まれているのだ。
この数値目標は、名目成長が実質成長を上回るという条件も課している。つまり、デフレ脱却を増税の条件としていることになる。この附則18条がまともに実行されれば、デフレ不況下での増税は避けることができるのだ。

しかし、その後の自公民三党協議では、自民党からの反発が厳しかった。「法律で時の政権の判断を縛るべきではない」というのが自民党からの反論だった。しかしそれは建前であり、「経済の状況がどうであろうと増税をしたい」というのが本音だったのだろう。この交渉では民主党からの出席者にも頑張ってもらった。三党協議の交渉の結果、先に掲げた経済成長の数字は努力目標であることと同時に、増税の実施はそのときの政権が判断することという制限が加えられてしまった。残念だがわれわれの力が及ばなかったことはお詫びするしかない。しかし2013年秋、そして2014年秋、総理官邸にエコノミスト、学者、団体関連の代表などが集められて行われた増税の賛否をヒアリングする消費増税点検会合が開かれたのは、附則第18条の景気条項の縛りがあったからである。増税を停止することができる法的効力を持つことから、マスコミからは「増税派への時限爆弾」と言われることもある。

民主党以外の政党を支持する方のなかには「消費増税に反対だったら、国会での法案の採決に反対すればよかったではないか」と仰る方がいる。国会や政党政治の仕組みを知らない暴論だ。2012年夏の時点で、既に民主党執行部、自民党、公明党が賛成を決めていた以上、他党が反対しても多数の賛成で法律は成立してしまうのだ。一部野党のように政局の観点から、或いはパフォーマンスで反対することが目的ならともかく、議決での造反には現実的な政治の効力は一切ない。ただの自己満足だ。それよりも、法律に増税推進派の手を縛る条項を盛り込むことで、経済の情勢や政局の変化を待つ方が現実的だ。

2014年4月の5%から8%の消費増税で、わが国の経済は大変な状況に陥ってしまったことはこれまで書いた通りだが、10%への再増税は避けなければならない。

霞が関の官僚は、再増税に反対する運動には全力で反発してくるだろう。彼らの裁量を増やし、これまでの施策を改革なしに続けるためには増税が必須だからだ。この消費税再増税は是非とも阻止しなければならない。だからわれわれはその最大の大義名分、武器として増税法のなかにこの附則18条を加えたのだ。

以上、私の著作である『日本経済復活のシナリオ-官庁エコノミスト出身の政治家がデフレの元凶を斬る!』より抜粋引用しました。


(注)社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律
附 則
(消費税率の引上げに当たっての措置)
第18条  消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済 の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2  略
3  この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指 標を確認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

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