人手不足で労使の力関係を逆転させよう!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

法律改正が最善の方法なのか?

「日本経済は必ず復活します」というのが私の信念です。そして経済再生のためにもっとも大切なことは何といってもわれわれの生活を改善することです。その中で、どういう働き方ができるのかという問題は、単に、経済的に大切なだけではありません。

さて、今、政府の働き方改革実現会議では、「同一労働同一賃金」の導入をはじめとする働き方の改革が議論されています。バイト、パートなど非正規雇用の下で働く人々の数が全体の4割を占める今、労働条件で改善しなければならないことは山積みです。生活を人間らしいものにするためには、お給料や労働時間をはじめとしたサラリーマン・労働者の働く環境を改善することは最優先に取り組まなければなりません。

基本給などの賃金は正社員、非正規の雇用形態によって一概に決めず、職務や勤続年数、配置転換の有無などの基準を定めて評価する仕組みを取り入れる。正社員と非正規で差が生じる場合は、どのような差が合理的か非合理かを示す事例をガイドラインに盛り込む。
首相「非正規の処遇改善を」 働き方会議

もちろん、正規・非正規の差別の禁止が「法律」の縛りではなく「ガイドライン」にとどまる点は、もう一歩の踏み込みが必要だと私は考えます。

さらに、他にも検討すべきことの一例として「一日の仕事が終わってから、翌日の勤務開始まで11時間空けなければならない」という「インターバル規制」をできる限り早く導入しなければなりません。ヨーロッパではインターバル規制はEU指令によって義務付けられています。内容についてはこれが私の意見です。

しかし逆に、特に企業側のように慎重な立場からすれば、たとえ「ガイドライン」という緩いものによってではあっても禁止されるのならば、この程度でいいのではないかという考え方もあるでしょう。このように立場によって労働問題への意見は180度異なるのですから、抜本的な解決は簡単ではありません。見かけだけの改善なら別ですが、日本経団連をはじめとする企業からの支援も受けている現在の与党が、拘束力のある法律改正にはたして本腰を入れるのかどうか、大いに疑問です。それに加えて、仮にすばらしい字面の法律改正が実現したとしても、それが力を持つのかどうか。企業が法律をしっかりと守ろうとするのかという疑問があります。

ここで皆さんに意識していただきたい大切なことは、「法的規制よりももっと強い力がある。それは、マーケットの力だ」ということです。法律や制度改正があってもなくても客観的な経済情勢の動きが大きくわれわれを動かしていきます。この流れに抗うことはできません。

週休二日が導入されたのは人手不足になってから

例を挙げれば、ホワイトカラーにとってはいまや当たり前のことになっている完全週休二日制。これが導入されたのはいつだったでしょうか。人手不足だったバブル期です。国家公務員では4週6休を経て、バブル経済の余韻が残る1992年5月に完全週休二日制が導入されました。私も当時、経済企画庁勤務(プロフィールをご覧ください)で覚えていますが、土曜日に昼過ぎまでの勤務のためにわざわざ電車で出勤することは大変に効率が悪いと感じていましたので、心から歓迎しました。

この背景にあったのはやはり経済情勢でした。極めて厳しい人手不足が後押ししたのです。この1992年に先立つ90年、91年は有効求人倍率がともに1.40倍と、1973年の第一次オイルショック以降の最高の倍率でした。つまり、高度成長が終わった後でわが国経済がもっとも人手不足になった、まさにそのときにはじめて完全有給二日制が導入されたわけです。

つまり、今まで経験したこともないほどの人手不足になって初めてサラリーマンの処遇は改善されたのです。冒頭の政府主催の会議のような法律改正、ガイドライン作成や単なる補助金だけで労働条件の改善ができるのかというと、労働基準法がザル法であるといわれている現状で、かりに罰則を設けてもどれだけ実際の効力があるのか疑問です。また、補助金も毎年よほど巨額の予算をつぎ込む覚悟がない限り効果は限られるでしょう。やはりマーケットの巨大なパワーには勝てません。

景気回復が進んでからはじめて給料が上がる

では、そのマーケットの力を利用して、サラリーマンの処遇を改善するためにはどうすればいいのでしょう。景気を回復させることが一番です。

景気が回復するにつれて、企業は次のように経営判断をすることでしょう。
製造業を例に取れば、

景気が回復して、商品が売れるようになり、
①思ったよりも売上が増加して、商品が在庫切れ
➡︎②生産増のため、今いる人手で、残業時間増で対応
➡︎③それでも人手が足りないので非正規雇用を増やす
➡︎④非正規からの変更など正社員を増やす
➡︎⑤逃げられないように既存の労働者の給料や処遇を改善する
➡︎⑥労働力を省くことができる生産設備を増やす

おりしも、先日11月29日に公表された10月の有効求人倍率は、とうとう1.40倍にまで上がりました。これは25年ぶりの高水準です。「いや、増えているのは非正規だけ」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、実際は、正社員だけを取り上げても有効求人倍率は0.89倍と2004年11月の集計開始以降で最高になりました。2008年のリーマンショック以前と比較しても、2006年の日銀による早すぎた量的緩和解除前よりも高くなっているわけです。先ほどの簡単なモデルでいえば、今はなんとか正社員を増やす第4段階に達したようです。

こうした企業面での好景気は続けなければなりません。景気の改善が進み、人手不足が進んで、はじめて大幅にサラリーマンの処遇が改善されます。逆の言い方をすれば、景気が回復して、人材確保が問題にならなければ、雇う側の会社には自社の会社員への処遇を改善するインセンティブが湧かないのです。

労使の力関係を逆転させるのが人手不足

マーケットの力、市場メカニズム、見えざる手を利用するのが最善の手段です。これを例えば「企業に内部留保(と呼ばれる現預金)を無理やり吐き出させて賃金にまわさせようとする制度」を作るなどしてゴリゴリ進めても決していい結果が出るとは思えません。

今の労働をめぐる制度が十分でないことは私も同感です。しかし、労働基準法がザル法であると批判されている現状で、厳正な罰則などなしに法律を少しくらい変えても大きな意味はありません。与党が本気で日本の労働環境をよくしようとしているのかどうか、外から見ても分からない中では、労使の力関係が決定的に変わらなければ、サラリーマン、労働者のお給料は上がりません。パート、バイトなど非正規労働者が不当な扱いを受けない世の中はきません。だからこそ景気回復を続け、人手不足の状態を続け、会社に対してサラリーマンが強いポジションを取れるようにすることこそが、われわれのお給料を上げ、労働環境を改善するもっとも近道なのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

フォローする