リバタリアニズムとフリードマン

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ノーベル賞経済学者でシカゴ学派の大御所のミルトン・フリードマンが11月16日94歳で亡くなりました。彼のベストセラー『選択の自由』は、1980年発刊ということですから、当時私は大学受験の真っ最中でしたが、分厚いハードカバーの本でしたが読んだ覚えがあります。(受験中に、そんなことだから浪人するんですね。)私なりに当時のばらまき福祉には反感を感じていましたので、その内容には共感するところが多かったのを今もよく覚えています。

当時は、これもつい最近97歳で亡くなったケネス・ガルブレイスの『不確実性の時代』もベストセラーになり、テレビシリーズにもなるなど、第2次石油ショックの直後で、経済学に対する関心(期待?)が高まっていた時代でした。もっともケインジアンだったケネス・ガルブレイスとミルトン・フリードマンでは主張が正反対なのですが・・・ケネス・ガルブレイスはニューディール政策で有名な民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領のブレーンで、ミルトン・フリードマンは典型的リバタリアンです。

さて、「貨幣が重要である」というマネタリズムの観点から、米国の大恐慌は、中央銀行がマネーサプライを絞りすぎたことが原因であると指摘したり、古典派経済学を復活させるために?期待の役割を強調したり、フリードマンの経済学への貢献は、疑いもなく巨人といっていいものがありました。

特に、彼の大恐慌の研究は、現代日本の景気回復問題で、とても重要な視点を提供してくれています。景気回復のために通貨供給量を増やしてデフレを抜けるべきだという、リフレーションと呼ばれる考え方の基本となる実証研究がこの大恐慌の研究でした。

ブッシュ大統領:私は、ここに自由のヒーロー a hero of freedom であるミルトン・フリードマン先生に敬意を表すことができることを、大変大きな喜びとするところでございます。

ミルトン・フリードマン先生は、道徳的なビジョンを推し進める to advance a moral vision ことに大変に力を尽くされました。そのビジョンは、社会は、人々が自由であり、さらにいえば、「選択の自由」が保証されている必要があり、その一方で、政府は、人々の決定を妨げるべきではないというビジョンであります。このビジョンは、我が国を変え、そして世界を変えつつ changing the world あります。(中略)
ミルトン・フリードマン先生は、自由な人々の判断の代わりに、政府が恣意的な判断を用いようとする場合には、その結果は、悲惨であるであろうことを示しました。人々の生活をよりよくすることができる「市場の見えざる手」と対照的に、政府の目に見えない足は、人々の望みを踏みつぶし、彼らの夢を破壊してしまいます。

ミルトン・フリードマン先生は、自由市場が完全であるとは主張しておりません。 しかし、ミルトン・フリードマン先生は、不完全な市場でさえも、傲慢な専門家と官僚の判断よりも、良い結果を生むことを示しました。先生が、政府による統制に反対する理由は、非効率だからだということだけではありません。それは、道徳的な考え方からもたらされたより深い目的からくる判断です。先生は、市場経済が正しいものであることは、道徳的に優れているからであると我々に教えてくれました。(後略)」

さて、これは、ミルトン・フリードマンの90歳の誕生日に際してブッシュ大統領が2002年にホワイトハウスで彼を称えた演説です。(演説調に訳しましたが、ちょっとうまくいきません。)

ここでは、大恐慌の研究や期待といった彼の経済学への貢献を称えられるよりも、その道徳的な背景を賞賛されています。我々はここに注目する必要があります。「米国中間選挙共和党敗北とリバタリアン」で書きましたように、まさに、米国においては市場主義は、経済学の枠を越えて、学問体系というよりも「道徳思想」として受け取られていることがよくわかります。

経済と道徳のつながりは、日本でも石門心学などに見られますが、プロテスタントの世界でも同様なことが見られます。その究極の形とでもいうべきでしょうか。米国では、競争至上主義が、伝統的な思想と結びつき、リバタリアニズム的な主張が正義の主張になっています。彼らにとっては正義であるがゆえに、国情の違いを無視して外に対して無批判に押しつけられてしまっています。古くは、ハルノートから、日米構造協議や現在のイラク状況まで、近代の歴史を見れば明らかでしょう。

経済的にも安全保障の観点からも、我が国と米国は密接不可分な関係にあります。北朝鮮まで核兵器を持つに至った今、日本は米国なしで、単独で自国の安全を確保することができません。この隣人とどうやってつきあっていくのか、フリードマンの死を通じて考えさせられました。

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