国会同意人事の焦点は日銀総裁人事

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民主党などの野党は、審議会委員などを任命するにあたって衆参両院の同意が必要ないわゆる国会同意人事に関して、運輸審議会委員の長尾正和氏、労働保険審査会委員の平野由美子氏などを再任させることに賛成しない方針で一致しました。

この国会同意人事は、参議院で否決されても衆議院で3分の2で可決すれば成立する法案審議と異なり、衆参両院ともに過半数での賛成が必要となっています。ということは参議院で与野党逆転が生じている今の国会では政府案が通るわけではないということです。参議院の不同意が決定すれば56年ぶりの出来事となり、「ねじれ国会」を象徴する事態となります。

野党、とりわけ民主党にとっては政権担当能力を示すよいチャンスを提供してくれる場となります。民主党は、国会同意人事の対象となる各種の審議会や公的機関について、必要以上に数が多く、結局、霞ヶ関の隠れ蓑にしかならないことから税金の無駄遣いであるとしています。

しかし、同意拒否の根拠がただ単に「出身省庁だから」、「天下り人事だから」ということではまったく意味がありません。もちろん、出身省庁の操り人形のような委員の就任を拒否するという方針は歓迎すべきですが、これはいまさら取り立てていうほどのものでもありません。むしろこのような理由でのみの反対は、政権担当能力のアピールという観点からは逆効果の面もあるのではないでしょうか。

むしろ野党は、こういった法律には設置が定められているものの実際の価値のほとんどないこのような審議会の人事にとらわれる必要はありません。当面の間でのもっとも重要な国会同意人事日銀総裁の後継人事であることはいうまでもありません。この日銀総裁人事についてきちんと対応することが今後重要となってきます。

以前にも日銀総裁後任人事について取り上げましたが、現在の福井俊彦日銀総裁は来年3月に5年の任期を終えます。特に日銀法改正後は、前任の速水優総裁時にも明らかになったように総裁の金融政策についての態度がよりいっそう政策に色濃く影響を及ぼすようになりました。

日銀の独立性を維持させることには異論はないですが、その独立が金融政策の目標設定まで許すものなのか、それともイングランド銀行などのように目標設定は政府と協議の上で行うが、手段の選択を日銀が行う形でのよりマイルドな独立性なのか、その点に関する詰めはまだまだできていません。

  《(政府との関係)
第4条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。》
(日本銀行法(平成9年法律第89号))

このように日銀法第4条は規定していますが、この精神がきちんと守られていると思う人はどれほどいることでしょうか。現在の日銀に強い独立性を与えたならば通貨の信任をきわめて短期的に追い求め、結果として中川秀直元自民党幹事長がいうように「平成の関東軍」と呼ばれるような行動をとる懸念があるということについては、昨今の早急な追加利上げを求める日銀の態度を見ていると私も同感せざるをえません。 だからこそきちんとしたルール作りが必要ですし、同時に、この点をきちんと理解した方が日銀総裁に就かれることが重要です。私は「日銀出身者が総裁にふさわしくない」とか「役人出身者はだめである」というような形式的な議論には組しません。本音をいえば、いまだ日本経済がデフレを完全に脱却したわけではないという基本を踏まえて、きちんとした金融政策を採っていただけるのでさえあれば日銀出身者でもいいですし、福井俊彦氏の再任であってもいいとさえ思っています。自分の出身組織に愛着があるのは人情からいって当然のことです。その愛着が節度のあるものであればむしろ組織内の人心掌握に役立つでしょう。例えば、お受けになるかどうかはまったくわかりませんが、慶応義塾大学商学部教授の深尾光洋氏のように、日銀出身ではあっても組織の利益だけを優先することのない方が次期の日銀総裁にふさわしいのではないかと個人的には考えています。

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