林業予算は林野庁予算全体の8%に過ぎない

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間伐など林業に直接関する予算について林野庁の皆さんからヒアリングをする機会を得ました。

林業の問題には、以前から関心を持っています。平成16(2004)年9月29日の台風による豪雨災害は、宮川村、伊勢市、海山町、紀伊長島町をはじめとする三重県南部に大きな被害をもたらしたことは記憶に新しいことだと思います。その時の特に宮川村での被害にいえることですが、急斜面の山の山林できちんと間伐が行われていなかったために、森林の保水力が下がり土石流が生じ被害が拡大したという指摘がありました。

我が国の木材の生産コストは6900円/立方メートルで、フィンランドの1400円の約5倍、同じ山岳国のオーストリアの3100-3600円の約2倍となっています。おそらくカナダなどの国と比較すれば同様に大きな格差があるものと思われます。この外材との競争で業としての林業で経営の採算が取れなくなっています。採算に合わないことから、間伐などの山の手入れも行われず、山は荒れて、保水力や下がり、洪水の原因となります。私は、間伐は外部性が高く、公益性が高いので公共事業として行うべきだと考えています。日本の公共事業予算は、各省庁縦割りになっていますが、他の省庁の公共事業予算を削ってでもこの分野に投入してもいいのではないかとまで思っています。そうしないと後代に受け継がれていく日本の森林がだめになってしまうからです。

ところが、林野庁の年間予算約3700億円中、間伐をはじめとして直接の森林整備に使われる予算はそのわずかに8%に過ぎないのです。それ以外は、松くい虫などの病虫害対策や治山など災害対策もありますが、林道などのいわゆる農業土木、農林土木作業や農水省、林野庁の関係団体への不要不急の予算がほとんどです。これでは本末転倒です。

今回、お話を聞かせていただいた範囲でも、せっかく説明してくださった林野庁の皆さんには申し訳ないのですが、広大な国有林野を管理し、それゆえ日本の林業を現業としても管轄している林野庁が一体今後の日本の林業をどうしていこうか、その大方針すら決まっていないことがよくわかりました。

例えば、先に述べたように日本の林業は外材とのコスト競争でまったくの劣勢にあります。これをきちんと考える必要があります。林業を今までと同じに木材の供給産業として温存するのか、そうでないのか。あるいは、最近の環境問題への関心の高まりの流れに乗って、林業を環境面から取り扱うのか。

現在、年間1700万立方メートルの国産材の供給がありますが、値段がつかないというなら、生産量を下げ、同時にコストダウンを図らなければならないはずですが、この期に及んで生産力の増強を考える予算があるなどというのはいったいなにを考えているのかまったくわかりません。林業のマクロ的側面をみる国の行政がそれでいいとは思えません。

三重県南部には昔からの大山持ちや著名な林産家の他に、中小の林業経営者もたくさんおいでです。彼らの経営はおしなべて苦しいのです。林野庁の行政が、自分たちの関連団体を肥え太らすばかりで末端の林業経営者にはあまりいきわたっていないということを知っているのでしょうか。彼らは、木材の値段が下がる中で何とか生きていこうと必死の努力をしています。

私も霞が関におりましたから、感じはよくわかるのですが、役所の建物の中の自分の机の前に座っていたのでは、行政に必要な情報はなかなか入ってきません。林野庁にあがってくる情報は関係団体のもとを通ってサニタイズ、といえば聞こえはいいですが、実のところ検閲された情報のみです。その関連団体にとって必要な情報と、国の政策作りに必要な情報は当然食い違います。このようなことでは大本営付の参謀に戦略策定を任せているようなものです。現場に赴いてきちんと情報を取らなければなりません。でも「それは県の仕事」とか、「現地事務所の仕事」とか嘯いているのがキャリア官僚の悪い癖です。

また、整然とした「名誉ある撤退」をしたいなら、直接有効かどうかはさておいても昔の通産省が構造不況業種からどのように撤退していったのかについておさらいをしてそれを参考にすることはまず第一に必要でしょう。また、環境問題としての切り口を強調するのなら、単にひとつひとつの予算に、呪文のように「環境問題の観点から・・・」といった後付の理由をするのではなく、例えば環境省と林野庁を合併させることくらい林野庁側から仕掛けるとかまだまだ手はあると思います。

もちろん林野庁にも採用職種によって土木の仕事しかできない人も大勢いるでしょう。しかしそういう組織の都合を国家的目標に優先させてはなりません。国家公務員ですから自分の職場がなくなるという根本的危機感はないのでしょうが、それでは民間の林産家はたまりません。

林野庁の仕事が役に立たないから予算を削れといっているのではありません。意味のない農業土木に費やすくらいだったらそのお金をもっと有効に使ってくれという林業家の切なる声をどうか聞き入れてほしいといっているのです。(廃止が決定した話題の独立行政法人「緑資源機構」のはなしも出ましたがこちらはまた次の機会に。)

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