連合会長高木剛さん講演

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3月12~15日の労使交渉の集中回答日に向け、現在春闘の真っ最中です。さて、先日、連合会長高木剛さんの講演があり聴衆として参加してまいりました。また講演の開始前に主催者様のご好意で別室にて高木剛さんにお目にかかり、短時間ではありますが直接お話させていただく機会もいただけました。

高木剛さんは、東大を卒業後、旭化成に就職し、労働運動に入り、連合最大の産別である旧・同盟系のUIゼンセン同盟(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)の会長を経て連合会長に就任されました。

お目にかかるのは初めてでした。高木さんの講演は質疑応答を含めて2時間以上に及びましたが、講演中も決して着席することなく話す姿からは熱意をひしひしと感じました。こういう迫力があるから人がついてくるわけなのでしょう。

『最近の日本企業は、特にトップ企業で空前の業績を上げ続けている。ところが労働者への賃金の割合を示す労働分配率はこの10年近く落ち続けいている。むりやり賃上げせよとはいわない。しかし、このところの米国経済情勢が原因の株安、対ドル円高、原油高や輸入原材料高を口実としてまたもや賃金を抑えつづけたならば、我が国経済の景況ははますます悪化する。 我が国の最近の景気拡大が輸出に依存しており、経済規模が拡大しないのは個人消費がどうしても伸びないことが原因である。労働分配率が低下しつづけ低所得の非正規労働者が増えつづけるこのような状況では、少子高齢化も進むし個人消費も増えない。いまや4世帯に1世帯が貯蓄ゼロになってしまった。個人消費拡大のためには今回の春闘で賃上げを実現することがどうしても必要だ。

個別の労働問題についても、国際水準より低い時間外や休日労働の割増率を引き上げるべきであり、非正規労働者の低い処遇は、日本社会の劣化の原因である。著名な大企業から率先して法律を守ってほしい。「多様な働き方論」は否定しないが、偽装派遣などローコストの乱暴な働かせ方が多すぎる。派遣労働には現状にそぐわない慣行もあるが、直すべき点が多い。

連合もこれまでに引き続きパートタイマーなど非正規労働者にも組織を広げていきたい。』

以上が、今回の高木剛氏の講演のあらすじです。私なりの理解をひとことでいえば、「最近の企業業績の向上の背景には、賃金を押さえたことがある。ところが、日本全体の景気を回復させるためにはこれまで抑えられ続けていた労働分配率を引き上げる必要がある。」という基本的な立場には大いに共感します。

この高木剛会長の指摘は、もちろん連合側から見た公式見解であり、ポジショントークであるという側面もあるはずです。しかし、経営者側の立場からはなかなか表立っては認められないと思いますが、米国の景気が思わしくないことから、今回の景気を引っ張ってきた輸出が落ちてくる可能性があることを踏まえて考えれば当を得たものだろうと思います。人件費全体で見ると最近の日本は下方にも伸縮的になりましたが、これは正規雇用をできるだけ抑え、派遣労働者などの比率を上げて実質的に賃金切り下げをおこなったことがその要因です。その評価は論者によって大きく分かれることでしょう。

しかし、マクロ的に見て消費拡大につながるために賃金引上げが望ましいとしても、個々の企業単位で考えると、特にそれぞれの産業分野でのトップ企業以外にとっては「とてもそんな余力はない。同業他社との競争に負けてしまう。」という言葉はうそであるとは思えません。それだからこそ、春闘賃上げの同時横並びの「みんなでわたれば怖くない」といったカルテル的な側面が役に立ちます。春闘での賃上げは日本の賃金動向のメルクマールになりますから、国内同業他社との並びの問題はおそらくクリアされますし、そうなれば海外との比較でも日本国内の物価上昇を意味しますから、少なくとも長期的には為替で調整されるでしょう。となれば競争力の問題はクリアできるのではないでしょうか。

労働組合は、その構成員の利益の達成のみをめざして労使交渉するのではなく、それ以外の部分、パートタイマーや派遣労働者の利害についてもきちんと配慮して活動すべきであるというルールが公正代表義務というルールです。つまり「同じ職場で働く人は、組合員であるなしに関わらず、それぞれの利益が公正に代表されなければならない」ということです。この概念は米国にはありますが、我が国にはまだ法的には取り入れられていないところです。

今、日本の労働組合組織率は20%を切り、約18%となっています。いわば長期低落傾向にあるわけですが、ナショナルセンターの長として、この公正代表義務を自ら負う形で活動を展開できれば、おのずと連合の影響力もますことでしょうし、労働組合は恵まれた正規雇用の労働者の集団であるといった類の批判も封じ込めることができるでしょう。

ちなみに、高木剛会長の下で、連合は拉致問題解決にも取り組み、最近は北朝鮮の金正日総書記にはがきを送るという運動を展開しています。すばらしいことだと思います。ハングルと日本語で「私たちの同胞を返して下さい」と記し、破棄されにくいように金総書記の写真を印刷する工夫もした。ということです。ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。ただのはがきの取り組みとはいっても産別ごとにさまざまな事情があるであろうなかでの運動の展開ですから、大変なご苦労があることだろうとお察しいたします。今後の高木剛会長、そして連合が日本全体のためにますますのご活躍をなさっていかれることを切に願っております。

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