クルーグマン・与謝野大臣テレビ対談メモ

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平成21(2009)5月24日、フジテレビ「報道2001」にて、与謝野馨財務大臣兼経済財政担当大臣と昨年のノーベル経済学賞受賞者であるプリンストン大学のポール・クルーグマンの座談会がありました。

インフレターゲット政策に関してのみ吉川洋経済財政諮問会議民間委員(東京大学大学院教授)の発言が入ります。過剰なナレーションも入っていましたがオミットしました。(特に、クルーグマンが政府の対策をおおむね認めているという趣旨のナレーションはまったくミスリーディングでした。)

明日の講義で使うためにざっと完成させましたので、著作権の絡みと正確さについてはご宥恕ください。(とりあえずYoutubeの映像と比較しても大きな間違いはありませんが。)内容については今は立ち入りません。

クルーグマンの発言に関しては、少なくとも日本関連については、これまでの発言と特に変わる部分はありません。インフレターゲット政策ももちろん放棄しておりません。(番組のナレーションではオバマ政権を辛らつに批判、としていますが、ちょっと表現が強すぎる気がしますね。ひょっとしてブッシュ政権と番組制作者が取り違えたのでしょうか。)

おこがましい言い方で恐縮ですが、私もまったく賛成です。以前は、非正規雇用切りによる雇用調整がこれほど急激になるとはまったく考えていなかったため日本は財政出動はしない方がいいとしていましたが、考えをあらためました。私の判断ミスでした。お詫びします。

ところで実は、先日、某所にて与謝野馨財務大臣の講演を聴く機会がありましたが、「米国は1929年の世界大恐慌の時に、3年間なにもやらなかった。日本の民主党の政策もそれと同じなんです。」と発言していました。

本当にそうでしょうか?一体、どこのどなたに大恐慌のレクを受けたのでしょうか。有効な政策に関していえば、現在の政府の対策も誉められたものではないでしょう。それとも世界大恐慌から米国は財政政策で脱出したとお考えなのでしょうか。まあ、金利を引き上げようとはしていないという意味では当時の米国政府よりはマシですかね。それから後述の「私たちの役所の人」というのは財務省のことですよね。まさか内閣府じゃないですよね。そうですよね。

以下が対談内容のメモです。

○イントロダクション
ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンはオバマ政権を辛辣に批判。ガイトナー財務長官を「ウォール街の手先」と呼んだ。
与謝野大臣は、クルーグマンの著書について「私たちの役所の人が全部読んだ」としている。

○日本の不況の原因を作ったのは?
与謝野:日本の金融システムはきわめて健全。実体経済も基本的には健全だが、輸出が半減してしまったことが原因。

クルーグマン:大臣の意見にほぼ同意するが、日本は耐久消費財などの輸出中心であり、こうした不況に影響を受けやすい。また、日本は「失われた10年」から完全に回復したわけではなかったということが重要。2003年に成長が始まったあと、景気刺激策を中止してしまった。ゼロ金利は続けるべきだったし、財政拡大も続けるべきだった。

○景気回復にはどうすればいい?
クルーグマン:こうした状況では簡単ではないが、インフレターゲット政策が実現可能ならいい。
吉川洋:クルーグマンのインフレターゲット論については、学者は賛否両論である。私自身は懐疑的である。
与謝野:経済にとって健全なインフレ率があると思う。
吉川洋:2~3%程度のマイルドなインフレをどうやって起こすのかが問題。
クルーグマン:残念ながらあなた方の意見に決定的に同意できないことが一点ある。インフレに対する恐怖は誇張されすぎている。これは水害の最中に火事の危険を叫ぶようなもの。日本銀行がインフレ率を発表することを恐れているのはわかるが、インフレターゲットを公表することが肝要だ。インフレ率については2%でもある程度効果があるだろう。

○日本の経済対策はこれでいいのか?
クルーグマン:エコポイント制度について、評価保留である。現時点でポイントが何に使えるかわからないのにポイントが与えられる理由が不明だが、まあ、やってみる価値はある。
与謝野:消費者マインドを刺激するためにエコポイントの制度を作った。同時に環境問題にも貢献する政策。ものを買うときに援助するというのは異常な政策だが、この時代には許されるのではないか。
クルーグマン:定額給付金については、米国などでは完全に失敗している。歴史的にみて給付金は使われずほとんど貯金される。採るべきではない。
与謝野:消費が貯蓄よりはるかに多いということが、過去の経験から推定できるので、定額給付金というある種の減税をやった。

○日本の経済にどんな政策が必要だと考えるか
クルーグマン:前例のないレベルの金融政策を積極的に進めるべきだ。ドイツと日本は似た状況にある。ともに輸出に依存し製造部門に強く金融部門は比較的安定している。そして世界不況の影響をもろに受けている。しかし日本にはドイツにはない利点がある。ユーロに縛られた国よりも自由な金融政策を取ることができることだ。積極的な金融政策を取るべきである。
与謝野:私は日本銀行ではないので、日本銀行の・・・
クルーグマン:しかし日銀を説得すべきだ。
与謝野:それはわかるが、現在、日銀は我々の期待以上に非伝統的な非正統的な政策を取っており、これ以上の金融緩和を求めてもほとんど無理なことだ。
クルーグマン:いや、余地はいくらでも残っている。日本の財政政策は正しい方向に向かっているが、もっとやるべきである。

○今回の経済政策の一番の目玉はなにか
与謝野:我々が作った政策は金融と需要を作り出すこと。この2つしかない。原書で読んだクルーグマンの著書『世界大不況からの脱出』によれば、「信用を回復し、消費を喚起することが必要」だと書いてあるが、それを参考に対策を作成した。

○財政出動は需要を増やすのか
与謝野:今回の財政出動の規模はGDPの3%であり、今年はGDPを2%押し上げる効果がある。これは、米国とほぼ同規模である。
クルーグマン:米国も日本も政策も間違ってないが、さらに進めるべきだ。
与謝野:麻生総理はたくさん財政出動をせよとしたが、一つずつチェックした。
クルーグマン:ケインズは「できるならばお金は賢く使え、しかし賢くない使い方でも役に立つことがあるのだ」といった。今は、とにかくお金を使うべきだ。
与謝野:今回の財政出動は大胆すぎるいう声もあるくらいだが、どうせ使うのだったら、驚かせるほどの額を使う必要があるという考えだ。
クルーグマン:そうだ。オバマ政権は、使いすぎると批判されているが、依然不足である。中途半端な政策はよくない。

○日本の景気回復はいつ頃か。
与謝野:来年の春には日本の経済はプラス成長になる。
クルーグマン:(反論)米国については、年内に回復の兆しを見せるだろう。日本は最悪の状況は脱したが、患者はいつ退院できるか分からない。5年後かもしれない。10年後かもしれない。

○魔法のような政策
与謝野:米国もヨーロッパも日本も手品のようなことはできない。汗と知恵を出さなければ本当の富を作り出すことはできない。
クルーグマン:しかし、現在の情勢下では、ひょっとしたら魔法のようなことができるかもしない。ケインズは「私たちには強力なエンジンがあるけど、一つ異物があって、動き出さない。そのちいさな異物を取り除けばエンジンは動き出すのだ」といったが、その異物を発見しなければならない。

○どの産業が日本を救うか
クルーグマン:わからないが、可能性があるのは環境産業だ。環境基準を厳しくすることによって、新たな温暖化対策を打ち出すことによって、投資の喚起ができる。日本はそこで大きな役割を果たせる。
クルーグマン:誰も特効薬を持っていない。いや、特効薬はあるかもしれないが、それがどれか分からない。あらゆるボタンを押してみることが大切。
与謝野:今回の経済対策がクルーグマンの本に合致するかどうか、いつも考えていた。
クルーグマン:ありがとうございました。
(以上)

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