景気底打ちと判断するのはまだ早い

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政府はこのところ月例経済報告の景気判断を二ヶ月連続で上方修正しました。もちろん在庫調整が進んだと判断すること自体には異存はありません。

確かに在庫自体は生産調整を受けて大幅に減りました。しかし、在庫を出荷で割って求められる在庫率はいまだに高い数字です。在庫調整の観点からは底打ちと判断できるものの、今後も出荷がいままでと同じ水準であるとは考えにくいのです。個人の消費や民間企業の設備投資がこれまでと同じ水準にすぐさまもどるとはとても思えません。

輸出にしても小康状態を保っていますが、これまで良くも悪しくも世界経済の牽引役だった米国の景気がそこまで簡単に回復するものかどうか、即断は避けた方がいいだろうと思います。また、日本からはまったくみえにくい欧州の小国を中心とした経済情勢の悪化が、英独仏の銀行の破綻や経済的混乱につながる可能性はいまだに否定できないだろうと思います。

輸出が伸びなければ、消費者物価の動きからもわかるように国内のデフレ期待はそのままですから何ともうまくいきません。ましてや、生産調整は非正規雇用削減などでこれまでに例のないほど急に行われました。生産調整の進展と、失業率の急上昇は裏腹の関係にあります。解雇などで収入が減ったために、通常なら消費に収入をまわす割合の高い低所得者層を特に中心として個人消費は冷え切っていると考えるべきでしょう。

輸出も期待できず、個人消費がダメなら民間企業の設備投資が出てくるわけがありません。次回7月発表の6月日銀短観は大幅改善だということですが、なぜ企業がそんなに楽観的なのでしょうか。自分の会社の在庫調整が終わったことはわかっているからでしょうが、マクロ的な経済の環境、つまりこれまでよりも一段と消費が少なくなってしまう危険性に関してはどのように感じているのでしょうか。景気の二番底の可能性は否定できません。

株価がずいぶん上昇しているじゃないかと思われるかもしれません。しかし、それはひとえに米国の景気回復に対する期待によるものです。だからこそ国内のニュースにはほとんど反応せず、米国の経済指標や出来事に関するニュースだけに市況が左右されているわけです。

政府にしてみれば、解散総選挙を控えた今は、昨年からの二度の経済対策で景気浮揚は果たせると意地でも主張したいところでしょうが、平成19年秋までの景気は輸出主導のものであり、輸出が頼りにならない今、またしてもデフレ期待が再燃していることや、定額給付金の制度設計がポール・クルーグマンにも酷評されたようにまったく無駄であることなどをはじめとして、私には今回の経済対策がさほど効果を持つとは思えません。

与謝野馨経済財政担当大臣は、「来年の春には日本の経済はプラス成長になる。」と繰り返し発言しています。来年の春にやっとプラス成長になったのでは、政府経済見通しの実質経済成長率マイナス3.3%は達成できず、マイナス4%台なかばになってしまうのです。政府経済見通しのためには各四半期を前期比で約0.7%の成長を実現する必要があります。そういう国会答弁的なことは抜きにしても、「ずいぶんと楽観的だなあ、中小企業や家計の苦しさがわかっていないのではないかなあ」と感じます。

その点、やや控えめな最近の日銀の景況判断には私も共感するところが大きいのですが、またぞろ、「景気対策に金融政策だけを使うな」とか、「非伝統的金融政策からの出口戦略を考えはじめるべき」とか、組織的利益だけを考えて勝手なことを言いはじめていますので、やはり政府も日銀もセクショナリズムという点では五十歩百歩だといわざるを得ないようです。

いずれにしても、今必要な経済政策は依然としてデフレ脱却だといってはばかりません。金融政策を中心に取り組む必要があります。

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