白川日銀総裁を銀行券ルール、日銀のバランスシートについて追及

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2010年10月21日参議院財政金融委員会の質問要旨。

政府に対して先方が国会答弁の準備をするために、議員側が事前に質問を通告する慣習となっているが、その際に配布した資料。これに基づき口頭でレクを行う。


○(財務省、日銀)2008年9月のリーマンショック以来の円高ドル安に、政府・日銀のそれぞれの政策に原因の一端はないのか。(例えば、日米(実質)金利差を念頭に置いている。)

・日銀に対して、中央銀行のバランスシートの「変化率」の差が原因の一つになっているのではないか。

○(日銀)6月の金融政策決定会合で、「成長基盤強化のための新貸出制度」について、複数の委員が「資金供給以外にも成長基盤強化の方策を検討する必要性がある」と主張していたそうだが、成長基盤強化の方策の実施は日銀法のどこに根拠があるのか。

○(日銀)「新成長戦略」での、景気回復の継続が予想されるフェーズⅠにおいて、物価については、デフレを終わらせ、GDP デフレーターでみて1%程度の適度で安定的な上昇を目指すこととされている。これに向けての具体的な方策如何。

○(日銀)「包括的な金融緩和」について
・無担保コール翌日物の金利の推移を見ていてもこの10月5日以降、6日に大きく下がったがそれ以降はむしろ上昇傾向にある。「実質ゼロ金利政策の明確化」というのは、金融政策を、10月5日を契機にさらに緩和したということではないのか。「金融市場調節方針を一段と緩和し」等の文言がないが、単なるこれまでの政策の延長の声明か?

・『「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続』とあるが、これまでの金融緩和で類似の表現はなかったのか。そのときはどのような結果になったのか。これに関する所見を問う。

・今回の「包括的金融緩和」で日銀のバランスシートは一年後にどの程度拡大するのか。

○(日銀)金融政策決定会合の決定内容や展望レポートの内容がなんらかのルートで事前に漏れているのではないか。例えば「日銀が28日に発表する平成23年度の物価上昇率の予想が前年比でマイナスに引き下げられる見通しとなったことが19日、分かった。」といった報道がみられる。これについて、情報の管理を厳密にすべきである。具体的な対応策を問う。

・23年度の物価上昇率の予想がマイナスとなることは、さらにデフレが進行することであるが、「中期的な物価安定の理解」との整合性はどうか。また、日銀として更なる金融緩和が必要になるのではないか。

○(日銀)銀行券ルールについて。特に、その根拠について。

・政府の国債発行額を一定にした状況(つまり、財政ファイナンスが目的ではない場合)の下で銀行券ルールを越えた場合、どのような経済指標に影響が出るのか?

○(日銀)中央銀行の自己資本比率や財務の健全性について。これらが悪化した場合、金融政策にどのような悪影響が出るのか。どのような経済指標にどのような影響が出るのか?

以上


当日の議事録から

○金子洋一君 六月の金融政策決定会合で成長基盤強化のための新貸出制度を実現をされたということでありまして、ただ、その会合の中で複数の委員が資金供給以外にも成長基盤強化の方策を検討する必要があるというふうに御発言をされていたようであります。資金供給以外にもというところがやや引っかかるんですが、成長基盤を強化するということでありますと、これは産業政策であろうと思います。私の理解では日本銀行の業務というのは金融政策に限定をされていると思いますので、こうした成長基盤強化の方策の実施というのは日銀法のどこに根拠があるのか教えていただきたいと思います。

○参考人(白川方明君) お答えいたします。
現在、日本経済が直面している問題、様々な問題に直面しておりますけれども、一つは物価安定の下での持続的経済成長経路にできるだけ早く復帰すると、これは言わば循環的な問題、それからもう一つは人口の減少あるいは生産性上昇率の低迷ということに起因しました潜在成長率の趨勢的な低下傾向と、この二つでございます。

この二つは、一つは循環、他方は中長期的というふうに取りあえず私今説明いたしましたけど、実はこの中長期的な問題が循環的なデフレの問題にも大きな影響を与えているというふうに思います。つまり、趨勢的に潜在成長率が下がってまいりますと、人々は将来自分の所得が増えていくというふうにはやっぱり自信が持てないわけであります。そうなりますと、当然みんな支出は抑制するということになってまいります。そういう意味で、私はデフレの問題の根源にある問題はこの日本経済の趨勢的な潜在成長率の低下だというふうに思っております。

この潜在成長率をそれではどうやって高めていくのかということは、これはもちろん、直接的にはこれは日本銀行の仕事ではございません。何よりも民間の企業が一生懸命努力をする、それからそうした企業を政府が環境面で支えていくということが、これがもちろん基本ということは十分に承知しております。

そういうふうに申し上げた上で、それでは日本銀行はこの面でやるべき仕事が全くないのかというふうに問いを立てますと、これは日本銀行の持っている手段でもって、そういうことで役に立つことがあればそれはやっぱりやっていく必要があるというふうに判断いたしました。これだけデフレの問題が大きな問題だというふうに認識している以上、そうしたことをやっぱり考えていくと。その場合に、日本銀行の法律の上でそれは何条で読めるのかということでございますけれども、日本銀行法の第二条で、物価安定を通じて国民経済の健全な発展に資するという金融政策の使命にこれは合致しているというふうに思います。それから、業務という面では、これは具体的に日本銀行が行います業務を日本銀行法の三十三条で具体的に規定しておりまして、その条項に則して私どもは行っているという理解でございます。

○金子洋一君 ありがとうございました。
今のお話を伺っておりますと、一点私も思うところがございますけれども、循環的な部分と中長期的な潜在成長率の問題と、潜在成長率を上げるためにこの成長基盤強化のための施策を取っておられるんだという御説明で、それは誠におっしゃるとおりだと思うんですが、ただ、デフレ克服という観点から見てまいりますと、中長期的な問題よりも短期的な問題の方が大きいのではないかとおっしゃる方の方がむしろ例えば学問の世界でも多いんではないかと思います。

ですから、今の白川総裁の御説明、私には、経済が常に均衡状態にあると仮定をすれば、潜在成長率を上げるということでデフレ脱却ができるんだということで、それは正しいと思うんですが、今均衡状態にないんだと、むしろ均衡状態にない短期的な出来事の方がインパクトが大きいんだと考える方々の方が学界も含めて多いんではないかと思います。

となりますと、やはりそういった金融政策の方にも全力投球をしていただかなければならない。今おっしゃったその潜在成長率の問題以外にも全力投球をしていただかなければならないということになると思うんですが、去る六月に閣議決定をされました「新成長戦略」で、景気回復の継続が予想されるフェーズにおいて、物価については、デフレを終わらせ、GDPデフレーターで見て一%程度の適度で安定的な上昇を目指すこととされております。

 このまず第一点として、そのGDPデフレーターで見て一%程度の上昇ということで、これを「中長期的な物価安定の理解」から見てどうお考えになるのかということが第一点。そしてもう一点は、このGDPデフレーターで見て一%程度の安定的な上昇を実現をする具体的な方策はどのようなものを考えていらっしゃるのかということをお尋ねをしたいと思います。

もちろん、先ほどの成長基盤強化ということが日銀の所掌の中に落ちるということでありましたならば、当然、物価という問題はまさに所掌中の所掌でございますので、その点十分御認識をいただいた上で御答弁を願えればと思います。

○金子洋一君 九月の十五日に財務省が、一日の規模としては恐らく史上最大でありましょう、二兆円という規模で為替介入を行われました。そのタイミング、大変驚きましたけれども、その当時かなりの効果を上げたと私は思っております。

しかしながら、その後経済産業省から公表されました円高の影響に関する緊急ヒアリングでは、一ドル八十五円の円高が半年続いた場合には、大体六一%の企業が生産拠点を海外に移したりあるいは海外生産の比重を増やすという決断をしなければならないというふうに言っておるところであります。ちょうど先ほど申し上げましたように、工場を閉鎖をする、あるいは解雇をするということが現実のものとして我が国の中で起こってしまうというわけであります。

この円高・デフレに対して、例えば二〇〇三年から二〇〇四年にかけまして総額で三十五兆円の為替介入が我が国の政府で行われたわけであります。その再現をもちまして円高対策にしようという声もあるわけでございますけれども、やはり今世界各国の状況を見てまいりますと、これからG20 の財務大臣・中央銀行総裁会議でもまさに議題となるであろう通貨安競争といったものに陥るのではないか。あるいは、実際には通貨安をねらったものではなくても、それを第一義的にねらったものではなくても、そういうふうに外国から言われてしまうんではないかというおそれもありますので、なかなかそうしたことは取るわけにはいかないんだろうと思います。

そこで、そうした為替介入以外の手段につきまして、ちょっとお尋ねをさせていただきたいと思っております。

まず、二〇〇八年からのリーマン・ショック以来の円高ドル安につきまして、政府、日銀のそれぞれの政策に原因の一端があるのではないかと、そのように考えておりますので、これは日銀の白川総裁、そして櫻井副大臣にお尋ねをしたいんですが、それぞれお答えをいただけないでしょうか。

○参考人(白川方明君) お答えいたします。
リーマン・ショック後の為替市場の動きを見ますと、金融システムの状況、あるいは米国経済の先行きなどに対する市場の見方の変化を反映しまして為替レートは変動をしております。

思い起こしてみますと、リーマン・ショックの直後、これは欧米金融システムへの不安が高まる中で、日本の金融システムは相対的に頑健性を維持しました。その下で円高が進みました。

一方、例えば今年の春を考えてみますと、米国経済の先行きに対して、我々からしますと、やや楽観的かなと思われる見方が市場関係者あるいはエコノミストの間で広がりまして、そうしたことをバックにしまして、今年の前半はむしろドル高円安方向の動きでございました。

それから、この夏場以降を考えてみますと、この夏場以降、特に為替の問題についていろんな議論が高まっていました。この八月、九月、それから現在に至るこの動きを改めて振り返ってみますと、この間どの通貨が一番上がったかなというふうに見てみますと、これ、資源国あるいは新興国の通貨、例えばオーストラリア・ドル、これは大変に上がりました。今、一九八三年以来の最高値を付けていますし、それから新興国の代表でもありますブラジルのレアル、これも大変に上がりました。

一方、いわゆる安全通貨として、スイス・フラン、それから日本円もこれは買われました。それからユーロにつきましても、七月の半ばごろまでは例の金融システム不安でユーロは売られましたけれども、その後、ストレステストを無事通過しまして、結局ユーロもかなり上がってまいりました。

こうやって見てみますと、下がったのは、主な通貨ではこれはドルだけであります。言わばこれ、ドルの全面安ということでございます。これは、特にこの七月以降、それから八月に掛けて強まりました米国経済の先行きに対する不安感の強まり、これがドル安という形でいろんな通貨にそれが反映したということでございます。

私が申し上げたいことは、為替市場で為替レートはいろんな要因を反映して動きますけれども、一番大きいことはやはりそれぞれの国の経済の強さ、弱さ、あるいは金融システムの状況、こうしたものを反映して変動をしていくというのがこれ基本的な動きだろうというふうに思います。

ただ、いずれにしましても、日本銀行としましては、円高が経済に与える影響については非常に注意して見ております。そうしたことも十分に踏まえまして、先般強力な金融緩和を更に強めたというわけでございます。

(中略)

○金子洋一君 どうもありがとうございました。
大変に大きな視野に立ったお話をちょうだいをいたしまして、ありがとうございました。

また、ただ、これは白川総裁の御答弁の中にありましたけれども、簡単に言うと、経済の強さの差と金融システムの頑強性、頑健性で我が国の円が高くなったというふうに理解させていただいたんですが、ただ、その二〇〇八年の九月以降の、例えば鉱工業生産指数の動きを見ますと、この金融危機の発信源でありました米国の鉱工業生産指数の落ち方は大体一五%、一方で、我が国の場合は恐らく三〇%をちょっと超える程度落ちてきたと思います。そういったことが二〇〇八年中に起きたと。ということを考えますと、果たして経済の強さという意味で日本の方が米国より強かったのかということになりますと、大いに疑問ではないかと思います。

さらにもう一点、金融システムの安定性と頑健性ということでございますけれども、確かに、二〇〇八年九月以降、FRBはバランスシートを二・五倍に年末までに大きくいたしました。その二〇〇八年中は余り金利の付かないもの、資産が買いオペの対象でしたから、その当時のFRBの政策というのは、まあ言わば信用緩和だったと思います。ところが、二〇〇九年の二月か三月ごろから金利の付く資産を買うようになった。具体的に申しますとMBSですけれども。といったことになりますと、FRBもバランスシートの大きさはそのままにして、二〇〇九年の三月以降はいわば量的緩和に移ったんではないかなと思います。

となれば、二〇〇九年の三月以降は、金融システムの安定性という面でも我が国と米国の差というのは余り大きくなくなってしまったんではないかと。それでも引き続き、特に二〇〇九年の三月以降においても円高の基調、つまり二〇〇八年の九月の以前は、円・ドルレートで申しますと百十円あるいはもうちょっとあった。ところが、それから二〇〇八年の十二月辺りには九十円ぐらいになったと。そういった傾向がずっと続いていたというのは、経済の強さあるいは金融システムの安定性ということだけでは説明ができないんではないかと思います。

やはりここは、例えば国際金融の教科書など見てまいりますと、長期的には購買力平価で決まるんだということでありますから、購買力平価で決まっていくと見ていった方がいいのではないかなと思います。となりますと、今の円高ドル安を直す、つまり長期的に有効な手段というのはやはりデフレから脱却するしかないわけであろうと思うわけでありますが、その点につきまして、またこれも白川総裁にお尋ねをさせていただきます。

○参考人(白川方明君) 日本銀行も含めて、中央銀行の金融政策の目的、これは物価の安定を通じて持続的な経済の発展に貢献していくということでございます。

その場合、その物価というのを何で測っていくのかということでございます。物価情勢は、もちろん単一の物価指数を見てこれですべて分かるということではございませんけれども、しかし、一般の国民の方から見て最も分かりやすい物価の指標は何なのかというと、やはりこれは消費者物価指数だというふうに思います。先進国の中央銀行それから新興国の中央銀行も含めてほとんどすべての中央銀行が基本的には消費者物価指数を基に金融政策を説明しているというふうに理解しております。

この消費者物価指数で見た物価の安定ということについて、もう委員はよく御存じのとおり、日本銀行は「中長期的な物価安定の理解」という形でその数値的な定義も明らかにしておりまして、消費者物価指数の前年比で見て二%以下のプラス、中心値は一%という上昇率を念頭に置いて金融政策を行っております。それで、GDPデフレーターでございますけれども、GDPデフレーターもこれはこれで情報価値のある物価の指標の一つだというふうに思っております。

ただ、GDPデフレーターにつきましては、これは、例えば原油価格が上がっていく、あるいは国際商品市況、食料品の値段が上がっていくというときにはGDPデフレーターはこれは下がっていくと、逆の場合にはまた逆だということ、これも一例ではございますけれども。国民の方とのいろんなコミュニケーションを図っていく上ではなかなか説明のしにくい指標であることもこれは多くの中央銀行が認識しているわけで、だからこそ消費者物価を使っているわけでございます。

ただ、いずれにしましても非常にはっきりしていますことは、物価の安定を目指してしっかり努力していくということ、これは私どもとして肝に銘じるところでございます。

もう既に御存じのことではございますけれども、先般も包括的な金融緩和政策ということで一段と強力な金融緩和を打ち出しました。日本銀行としては、先ほどの分類でいきますと循環的な問題としてのこのデフレ、この問題にも金融政策面で最大限の努力を現に続けていますし、これからも続けていきたいというふうに思っております。

○金子洋一君 ありがとうございました。

○金子洋一君 まさにその包括的な金融緩和政策の中で、ある文言についてお尋ねをしたいと思うんですが、「『中長期的な物価安定の理解』に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続」という表現がこの(2)の中にございます。大変いい、これは(民主党の)財(政)金(融)の部門会議の中では日本銀行の方がこれはコミットメントをしたんだという御説明をいただきましたけれども、これまでの金融緩和の中で、こうした「その安定が展望できる状態になった云々」というような類似の表現はなかったでしょうか。そして、そのときにはどのような結果になったんでしょうか。そして、その政策判断の評価についてもお尋ねをしたいと思います。

○参考人(白川方明君) お答えをいたします。
委員が御指摘のとおり、日本銀行は今回を含めまして三回、今コミットメントという言葉を使われましたけれども、そうした時間軸政策を採用いたしました。

一回目は、一九九九年から二〇〇〇年に実施しましたいわゆるゼロ金利政策ということでございます。当時はデフレ懸念の払拭が展望できるまでこうした政策を続けますということを発表いたしました。

二回目は、二〇〇一年三月から実施しましたいわゆる量的緩和政策の時期でございまして、このときは消費者物価指数、除く生鮮食品のベースで見て前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまでこの政策を続けますということをコミットする、約束をしたということでございます。

それで今回三回目ということで、先ほど委員がおっしゃった政策を発表いたしました。

こうしたいわゆる時間軸政策の評価、特に学問的な評価ということについてはいろんな研究者が行っておりますけれども、そうした研究の成果と、それから私どもの金融政策決定会合での議論、これを総合しまして私なりの評価をいたしますと、この時間軸政策が一番効果を発揮するのは、景気が本格的に良くなっていくというときに、この約束があることによって現在の低金利がまだ続くということが最後背中を押していくわけでございます。

今、これは日本銀行もそうですし、ほかの先進国もそうですけれども、景気の状況、これは力強さが今ないわけでございます。回復はしていますけれども、緩やかな回復でございます。そういうときに現在の低金利が続くということは、これはある意味で、みんなそういう金利が続くんだろうなというふうに思っているわけでございます。そういう意味で、この効果に関する評価という意味では、景気がこの後持ち上がっていくときに、その段階でより大きな効果が発揮されるものだというふうに理解をしております。

○金子洋一君 ありがとうございました。
ゼロ金利のときと量的緩和のときだということでありますけれども、ちょっと私のお尋ねの仕方が悪かったのか、そこから脱出をするときの、言わば出口戦略を取ったときのタイミングと、その結果がどうだったのかということをお尋ねをしようと思ったんですが。

例えばゼロ金利政策のときでしたら、「デフレ懸念の払拭ということが展望できる情勢になるまで」という速水総裁の御発言があって、実際にゼロ金利政策から離脱をしましたのが、これが二〇〇〇年の八月になりますが、では、その二〇〇〇年の八月にはデフレ懸念の払拭ということが展望できるようになっていたんでしょうか。その点についてお答えいただきたいと思います。

○参考人(白川方明君) 金融政策決定会合では、その時点その時点で利用できる情報、これを基に将来を予測し、政策を行っているということでございます。その時点でデフレ懸念の払拭ということが展望できるというふうに判断をしてゼロ金利政策を解除したというふうに理解をしております。

もちろん、経済のその後の展開ということは、これはこのときに限らず、いつも新しい情報が入ってまいります。あのときでいきますと、世界的なITバブルが崩壊をし、その結果、世界経済全体として、もっとその後は非常に厳しい状況になったということは、そのとおりでございます。この点につきまして、これは当時、日本銀行に限らず、欧州中央銀行、FRBも共に、世界の重立った中央銀行はいずれもそうした世界経済の落ち込みということをその夏の時点で織り込んだわけではなかったということはそのとおりでございます。

私としましては、過去のいろんな政策、いろんな政策の判断、それからその後の経済の推移、そうしたことをそれぞれ自分なりに反省の材料にもし、将来に生かす材料として、今度のこの政策についてもまた生かしていきたいというふうに思っております。

○金子洋一君 済みません、やや抽象的なお答えなんですが、じゃ具体的にお尋ねをいたしますけれども、その二〇〇〇年の八月の時点で、消費者物価指数の動きを見て、それは継続的にプラスになっておりましたでしょうか

○参考人(白川方明君) 金融政策の効果、これが発揮されるのは、これは一年半あるいは二年、場合によってはもっと長いというのが、これは一般的な理解であります。

つまり、金融政策の効果波及は時間が掛かると。つまり、その時点での物価上昇率、それだけで判断するとこれは金融政策を誤るというのが、これが教訓でございます。直接の御質問に対するお答えではないかもしれませんけれども、例えばバブルのときもそうですけれども、いろんな金融危機のときに足下の物価上昇率、これは非常に安定している、しかしそれが二年たち三年たつと非常に大きな不均衡をもたらすと。

そういう意味では、この時点でのポイントはデフレ懸念の払拭が展望できるかどうかという判断であったというふうに理解、認識しております。

その時点ではデフレ懸念の払拭が展望できるというふうに判断したというふうに認識しております。

○金子洋一君 今のお答えを日本語として解釈をさせていただきますと、もちろん御存じのように、二〇〇〇年の八月の時点では消費者物価指数は継続的に前年同月比でマイナスを続けておりましたことは、総裁、よく御案内のことだと思います。前年同月比でマイナスをずっと続けていたにもかかわらず、しかも物価の安定ということが日銀の最大の政策の目的であるのにもかかわらず、その時点でデフレ懸念の払拭が展望できたとおっしゃっているわけですね。

○参考人(白川方明君) 繰り返しになりますけれども、物価が経済に対する、景気に対する、これは全体に遅れて反応する、そういう指標でございます。したがって、物価の将来を見通していくというときには、例えば設備の稼働率がどうか、あるいは雇用情勢がどうか、そうしたことを総合的に判断してかなり先の物価を予測するわけでございます。足下の物価が今マイナスであるということ、その一点だけでもしございますと、足下の、例えばこれはバブルのときも足下の物価は、これはマイナスもございました。

したがって、私は足下の物価、これはこれでもちろん大事ですけれども、それ以上に大事なことは、この後物価の軌道がどういうふうな軌道になっていくかということでございます。今回、私どもの発表の中では、先々の経済、物価情勢を展望して、物価安定を展望できると、そうした姿を展望できるかどうかということを強調して発表しておりますけれども、それもそうした趣旨によるものでございます。

○金子洋一君 おっしゃることが正直申し上げまして分かりません。
これ、一九九九年の四月十四日の日銀総裁、速水総裁だと思いますけれども、デフレ懸念が払拭されたと判断するときの条件は何かという記者からのお尋ねに対して、「条件と言われても困るが、この辺は、私どものいわゆる長年の経験や専門的な見方で判断できると思っている」とおっしゃっています

その判断というのが、足下の物価が長らく前年同月比でマイナスを続けている、それなのに、今後これは必ずプラスになりますよと言われても、まさに市場とのコミュニケーションもできませんし、先ほど総裁はGDPデフレーターを使うと一般の方々に分かりにくいとおっしゃいました。GDPデフレーターよりも消費者物価指数の方が分かりやすいとおっしゃいました。いや、私には、そういうことの分かりやすさよりも、足下のCPIが継続的にマイナスを続けているのに何でデフレ懸念の払拭と言うことができたのかということの方がよっぽど分かりにくいと思うんですが、それが一般の企業人やあるいは御家庭の皆さんの感覚ではないでしょうか。

これでデフレ懸念の払拭ができたとおっしゃられても、そして消費者物価の動きを見て判断をしましたとおっしゃっても、これはどこで判断をなさったのかと。消費者物価指数を御覧になるとおっしゃっていて足下がずうっとマイナスだと、別に消費者物価指数の動きを見ても上の方を向いてきません。

そういったことを踏まえてまいりますと、なかなかこうしたことを、「包括的な金融(緩和)政策」につきましてコミットメントをなさったんだ、信じてほしいと言われても、これはやはりだれも信じてくれないんじゃないかと思います。特に、海外から今我が国は投資を求めなければならない状況にあります。それに、海外の皆さんに対して、そういった、日本語ではこういうふうに解釈するんですよと言ってだれが理解をしてくれるんでしょうか。
私はそこは全く納得いきませんし、またこの問題につきましては引き続きお尋ねをさせていただきたいと思っております。以上でございます。どうもありがとうございました。

(以上)

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