震災復興の財源は日銀引き受け震災復興国債で

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先に20兆円規模の「日銀引き受け震災復興国債」を発行せよとして、提言原案をアップしましたが、今回の提言はその後、大勢の政府与党関係者との議論を経て、現在私が根回しに使っている現時点での最新版です。

成果はといわれると未だ明確なものはありませんが、ただ、「増税か日銀引き受けか」が可能性のある選択肢として検討されたことは戦後一度もなかった中で、現在、マスコミを含めて多くの皆さんに検討していただいていることは確実な前進であり、もう一歩の努力をせねばと痛感しています。皆さんもぜひご支援ください。

 なお、政府与党関係者への根回し用資料ですので、表現は政治家向けで、かつ、与党の立場に立った書き方になっていますのでその点お含み置きください。
(平成23年8月3日改変:『震災復興の財源について』を第9版に差し替えました。)


震災復興の財源について(第9版)
20兆円超の「日銀引き受け震災復興国債」を発行せよ

平成23年5月2日
参議院議員
金子洋一

 今回の大震災復興財源として、増税や自治体負担は望ましくない。政府与党のリーダーシップにより日銀引き受け「震災復興国債」を20兆円超の規模で発行し、同時に財政再建の見通しを公表すべきである。まずは被災地救済のために現地被災者を雇用した公共事業から手をつけるべきだ。組織の利益を優先する官僚の主張に負けてはならない。

1.増税でなく国債発行が必要
(政府与党のリーダーシップが必要)
阪神大震災の総復興事業費は約16兆3千億円とされているが、各種の試算を踏まえると今回の大震災にはこれを大きく上回る金額(20兆円超)の確保が必要だ。政府与党のリーダーシップによる対応により速やかに人心を安定させることがなによりも大切だ。地震や津波災害に強い新たな町作りも急務である。道路、堤防等のインフラも早く復旧させる必要がある。被災地での工業部品供給ストップなどがボトルネックになって製造業のサプライチェーンが途切れ、国内他地域へも甚大な影響が生じている。

(日銀引き受けと財政再建計画公表を同時に)
関東大震災では財源確保のために外債を発行し、阪神大震災でも増税でなく国債に財源を求めたが、今回も、財政法第5条ただし書による「日銀引き受け震災復興国債」を国会の議決を経て発行し最低限20兆円まかなうことが必要である。その際には、国債の暴落などの副作用を防ぐために、中長期的な国債の返済計画やプライマリーバランスの達成時期などの財政再建の見通しを公表する。その使途は、震災復興のインフラ整備や生活再建に関わる公共事業に限定し、他の用途への転用は厳禁する。政府による利払費の増加を避ける目的でゼロ金利国債とすることも考えられる。また、政府が外国為替資金特別会計で保有している1兆ドル近い米国債を米国政府の了解の下で日銀に担保として提供することも検討の価値がある。

十分な金額を示すこととこれら将来に対する説明責任を果たすことで国民と市場からの信頼を得ることができる。

(増税は不合理であり、景気に打撃)
恒久的支出は恒久的な財源でまかなうことがペイアズユーゴー原則であるが、今回のように百年あるいは千年に一度の大災害の復興費用を増税によって現役世代だけに負担させることは不合理である。また、景況感に計画停電や出荷停止、資金繰りの悪化などがマイナスの影響を与えている現状で増税をおこなったのでは、罹災していない地域での景気にも悪影響がある。【注:税収弾性値の直近15年の平均は約4である。例えば名目GDPが5%マイナスになっただけで、税収は約20%減少することを忘れてはならない。】

(予算組み替えでは不足)
また、今年度の国税税収は約40兆円である。消費税1%の引き上げでまかなえる財源は約2.4兆円に過ぎず、復興に必要な金額は巨額であるため来年度予算の組み替えや臨時増税では到底まかなえない。

報道されているように直ちに補正予算を組むにしても、増税ではただちに大規模に政府が動くことはできない。予算の組み替えもまた政権交代の成果を放棄することにつながりかねない。また、被災した地方公共団体による公債発行は、今の財政状況と被災状況を考えれば非常に高い金利を余儀なくされるので避けるべきだ。

(新規立法は不要で直ちに財源確保可能)
「日銀引き受けによる国債発行」ならすでに財政法第5条ただし書に規定されている。新たな立法を必要とせず国会の議決のみで直ちに発行できる。【注:白川方明日銀総裁が財政法第5条ただし書による国債の日銀引き受けは禁止されている旨の国会答弁を再三しているが、日銀法第34条に引き受けの規定があり(参考3)、また国債整理基金特別会計の中で毎年行われていることは周知の事実である(参考4)。】

(個人向け震災復興国債)
同時に、個人向け震災復興国債も発行すべきである。特にこれはマイナスの金利をつけるなどして義援金としての性格を持たせることも検討してよい。

(通常の国債発行の欠点はない)
日銀引き受けされる国債は政府から市場に売却されないため、通常の赤字国債の発行と性質が異なる。建設国債、赤字国債を問わず通常の長期国債発行で復興費用をまかなった場合には、通貨供給量が増加しないので今後一層の円高を生み、長期金利が上昇(=国債価格が下落)し民間設備投資を妨げる可能性や、国債の償還にも支障が出る可能性がある。

20兆円超の規模で日銀引き受けを行うと過大なインフレとなるとする論者もあるが、確かにマイルドなインフレをもたらす可能性はあるものの、今年度の国債の新規発行額は44兆円、累積発行額は900兆円に近い現状でも物価はデフレ基調で推移しているため特に心配はいらない。万一、インフレの兆候が見られれば財政出動はそのままにしておいて金融政策を引き締めればよい。

2.より金融を緩和すべき
(日銀の怠慢)
日銀が震災後大きな金額の短期資金供給をおこなったことは事実。しかし、これは震災を受けて、現金を余分に抱え込もうと考える金融機関への対処として翌日決済などのきわめて短期の資金を、金融機関を対象に供給したもの。商品の流通が止まったことによって資金繰りに苦しむ民間企業に対しては、金融機関を通じての特段の資金の供給は行われていない。これはすなわち自分の天下り先である金融機関を思いやっての行動に過ぎず、これまでの組織の利益優先の行動パターンから一歩も出ていない。復興には金融システムの安定だけでは不十分であり、企業の設備投資などのための長期資金の供給がボトルネックとなる。

(日銀の国会軽視)
これにくわえ白川総裁は「通貨の信認と物価の安定」だけを気にかけ、景気を真に憂慮している様子は見て取ることができないばかりか、あまつさえ財政法第5条ただし書に係わる国会の議決を牽制する発言を国会審議中再三繰り返しており、その国会軽視は目に余る。

(長期金利や円高対応が真の問題)
真の課題は、第一に、設備投資に影響する長期金利が高騰しないように、長期国債の買い切りオペを拡充することである。後述のように、日銀の日頃の主張を認めたとしても15兆円から20兆円保有残高を増やす余地がある。第二に、震災直後から起きた国内への資金環流(リパトリエーション)の副産物などと巷間噂されている円高を是正し、輸出を促進し被災地を含む雇用を拡張することである。

これらの目的達成のためには金融緩和への日銀のコミットメントを高める手段の導入を別途検討する必要がある。

3.想定される反論について:「日銀券ルール」
(日銀にはまだ余力がある)
日本銀行には「長期国債の保有残高を日銀券の発行残高以内に納める」といういわゆる「日銀券ルール」がある。多くの論者がこのルールを前提として議論を進めているものの、これは日銀が組織的利益を追求するために唱えているものに過ぎず、経済学的な根拠はない。

しかし仮に「日銀券ルール」を前提としても、日銀による2月末現在の長期国債保有残高は約59兆円で約79兆円の日銀券発行残高まで20兆円ある。つまり、まだ20兆円日銀は長期国債を市場から買い入れる余力がある。また、平成15年頃には日銀券発行残高が約70兆円。その一方で長期国債保有残高は約65兆円あったのだから、百歩譲って当時と同じ程度までしか買い進まないとしても15兆円分保有を増やせる。

(弊害どころか景気は持ち直し:平成15年の実例)
平成15年当時は、量的緩和の最中であり比較的金融は緩和されていたため円安にふれ、景気は輸出だよりではあっても回復基調にあった。政府月例経済報告によれば「景気は、持ち直しに向けた動きがみられる」(平成15年10月)とされており、反対論者が主張するような「長期国債を買い込んだ弊害」はまったくなかった。

(国債の暴落はあり得ない)
国債の日銀引き受けの副作用を過剰に気にする論調が多いが、彼らが主張するところの「日銀券の信認」が一時的に落ち、その結果、マイルドなインフレや円安を招くが、これは現在の円高デフレ下ではむしろ望ましい。今回の震災直後には、株式は過剰に売られたが、国債はまったく下落しなかった。その後も現在に至るまで国債の価格はきわめて高値安定(=長期金利は低位安定)している。戦後最大の悲劇であり、本来なら投機筋にとってこの上もない儲けの好機のはずであったが、これが市場からの真の評価であると考えてよい。

4.政権与党としての責任を果たせ
(増税では税収は増えない:消費税増税の例)
平成7年の阪神大震災後のわが国経済には今よりも体力があった。その状況でも当時の政権は復興費用として増税ではなく国債を選んだ。ところがその後、平成9年4月、消費税増税などに舵を切った後、わが国が本格的にデフレに陥り、増税したにもかかわらずそれ以降ただ一度も税収が平成9年を上回ったことがない事実を忘れてはならない。

(政治決断が必要)
霞ヶ関や日銀官僚の唱える「日銀券の信認」、「市場の不信感」など中身のない、空虚な言葉に束縛されて、わが国の復興に携わる政権与党としての責任から逃れてはならない。

(以上)

(参考1)「日銀直接引き受け国債」と「赤字国債」の違い
「赤字国債」は、毎年制定される公債特例法に基づき発行され、財務省が市場に国債を売却するものである。「日銀直接引き受け国債」は、財政法第5条ただし書に基づき発行され、市場に売却するのではなく、日銀法第34条3項の規定により自動的に直接日銀に購入(「日銀引き受け」)させ、政府は財源として日銀券(紙幣)を入手するものである。大量の国債を市場に出すことなく資金を調達できることから、国の実質的な累積債務を増やすことがない一方で、通貨量が膨張することからインフレを起こす可能性があると考えられている。  なお、現在でも、特別会計の中で国債の日銀引き受けを行わせることや、市場から既発の長期国債を日銀が購入することは通常業務の一環としておこなわれている。(参考2)「財政法第5条」
「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」

(参考3)「平成23年度特別会計予算 予算総則」
(国債整理基金特別会計における日本銀行引受公債の限度額)
第5条 国債整理基金特別会計において、「財政法」第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする。

(参考4)日本銀行法第34条
「日本銀行は、我が国の中央銀行として、前条第一項に規定する業務のほか、国との間で次に掲げる業務を行うことができる。
一  財政法 (昭和二十二年法律第三十四号)第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において担保を徴求することなく行う貸付け
二  財政法 その他の国の会計に関する法律の規定により国がすることが認められる一時借入金について担保を徴求することなく行う貸付け
三  財政法第五条 ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行う国債の応募又は引受け (後略)

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