子ども手当は死なず

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今回は、子育て支援に関する政策についてお伝えすることにしました。「子ども手当」です。実は、この子ども手当の廃止の問題は、民主党とその他政党との政治に対する根本的な考え方の違いを浮き彫りにしているのです。

8月5日の朝刊各紙には、「子ども手当廃止・児童手当復活」という見出しが躍りました。前日の8月4日に民主、自民、公明の3党間で、子ども手当の見直しが合意されたためです。

見出しの表現はマスコミ用語でいう”飛ばし”、あるいは誤報と言ってもいいくらい、実際とは異なるのですが、それをご説明する前に、これまでの子ども手当の経緯について簡単に振り返っておきます。

子ども手当は、平成21(2009)年の総選挙に際し、私ども民主党が掲げた主要政策の一つです。「すべての子どもたちの育ちを、社会全体で支援する」との理念のもと、所得制限などは一切設けず、義務教育終了まで子ども一人当たり月額1万3,000円を平成22年6月から支給してきました。23年度からは、3歳未満の子どもについては月額7,000円を上積みする方針でしたが、東日本大震災が起きたため、復旧・復興財源に充てるため、断念しました。

問題はその後です。22年度の子ども手当の効力は今年3月末までなので、法律を延長する必要があったのですが、野党側はこの機をとらえ、自公政権時代の所得制限が付いた月5,000円程度ときわめて少額の児童手当に戻すことを要求してきたのです。「子ども手当はバラマキだ」と決めつけるのが野党側の常套句になりました。

本当に子ども手当は単なるバラマキ政策なのでしょうか?

過去の政治手法は、選挙で自分を支持してくれる団体に対してのみ、特別な税制や補助金などで利益誘導をするものでした。そうした旧来の政治手法からは、自分の党を支持している、支持していないに関わらずに、国民一人ひとりに対して直接に平等に手当を支給する子ども手当のような手法の導入は党の存立基盤をゆるがす脅威でしょう。

野党は、子ども手当の他にも、高校授業料無償化、農家への戸別所得補償などをさしてバラマキだと強く批判をしていますが、これは先に述べたように利益誘導と引き替えに政治献金や支持獲得を狙う彼らの政治戦略を無効にするものだから反対しているに過ぎません。

在日外国人の子弟が子ども手当を不当に受給するという批判もありましたが、子ども手当が児童手当の法的枠組みをそのまま利用して給付されているため、不正受給もこれまでの政権時代に作られた児童手当の制度的欠陥であり、これまでも起こりえたことです。今回、法制度を整備してこのようなことをなくすことができました。

事実、野党の主張は国際的にもあたりません。先進国の中でも子ども手当がない国はほとんどなく、高校授業料が無償でないのも韓国くらいのものです。農家への戸別所得補償制度も多くの国で採用されています。

これまでの政策は、野党自身のバラマキという言葉をあえて流用すれば、「えこひいきのバラマキ」であったのに対して子ども手当は「平等なバラマキ」です。

このように子ども手当に対する野党の主張には賛成はしかねますが、震災復興が今は何よりも優先されるとの考えから、民主党は、自公両党と協議を重ねた末、野党側にある程度の譲歩をし、24年6月支給分から年収960万円程度(夫婦と児童2人世帯)を基準とする所得制限を導入することなどに同意しました。

「年収960万円の家庭まで子ども手当はいらないのではないか」と思われるかもしれません。しかし、子ども手当の導入と合わせて、これまで行われていた「年少扶養控除」(年額1.1兆円)という所得控除が廃止され、その全額が財源に充てられています。つまり、所得が多い家計ほど既に負担が重くなっているため、あまり手当の所得制限を厳しくしてしまうと実質的な増税となる世帯が増えてしまうのです。それでは制度本来の狙いと大きく食い違ってしまいます。

また、3党合意では、所得制限の基準を超える世帯にも「必要な税制上(=税額控除)、財政上(=手当の給付)の措置等を検討したうえで、所要の措置を講ずる」としています。高所得世帯でも何らかの形で対処される可能性が残っています。すべての子どもを支援するという民主党の旗印は降ろしてはいません。ちなみに、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、スウェーデンなど欧米の先進国では、子どもに対する手当に所得制限はかけていません。

今年10月分から来年3月末までの給付に関しては、3歳未満が月額1万5,000円、3歳以上小学校卒業前(第1、2子)が月額1万円、同じく第3子以降が月額1万5,000円、中学生が月額1万円と決まりました。自公政権時代の児童手当では対象外だった中学生についても、給付は引き続き行われます。

全体の給付規模は約1兆円だった児童手当に比べて2.2~2.3兆円と倍増していますが、先に述べた年少扶養控除の廃止分が財源となっていますので新たな財政負担は生じていません。こうした内容を条文化した子ども手当特別措置法案は8月26日に国会で成立しました。

24年度からは単年度限りの制度から恒久制度に移行します。法律上は、児童手当の改正という形をとりますが、制度の名称はどうあれ、来年4月からは恒久的な子どもへの手当がスタートすることになるのです。

「子ども手当は死なず。」その理念は残り、法律上の名称だけは児童手当にもどったものの、新聞の見出しにあった「子ども手当廃止・児童手当復活」とは事実はまったく異なります。むしろ、民主党側の粘り腰で、元の不十分な児童手当に戻すことを阻止し、子ども手当の理念と中身を守った合意だったと理解していただければ幸いです。

これからの日本経済の潜在成長力を伸ばす上でも、少子化に歯止めをかけ、子どもたちがのびのびすくすく成長できること、そして彼らが十分に能力を発揮できる環境を作ることが鍵を握っています。わが国の将来を党利党略に左右させてはなりません。私はこれからも子ども手当の理念を守っていきます。

(メールマガジン平成23年9月12日号より)

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