先週から今週にかけ、多くの高校や大学で文化祭・学園祭が開催されました。みなさんのお近くの学校でも、それぞれに知恵を絞った楽しい行事が繰り広げられたことと思います。
先月10月27日(木)、私は参議院財政金融委員会で質問に立ちました。財金委員会での質疑は8月9日以来で、通算5回目となります。
質疑では、はじめに甚大な被害を日系企業に今も出し続けているタイの洪水について日本政府による救済策を尋ねました。経済産業省の五嶋賢二大臣官房審議官からは、資金繰り支援のために、日本国債を担保としてタイ中央銀行から邦銀現地支店などにタイ・バーツを供給してもらうことを検討していることや、日本政策金融公庫の資金支援制度が災害復旧に適用できるようにした旨の説明がありました。
洪水の収束のめどはたっていません。タイは多くの国と自由貿易協定を結んでおり、日産をはじめとする日系の自動車産業やエレクトロニクス産業の重要な生産拠点です。現地日系企業や日本経済へのダメージを最小化するために、復旧支援に全力を尽くしてほしいことを政府に対してお願いしました。
さて、今回の質問の中心は、M&A(買収・合併)にからむ不透明な資金の流れが指摘されている光学機器メーカー、オリンパスの問題についてでした。質疑の全容は、「財金委員会でのオリンパス社問題質疑全文」でご覧になれますし、多くの内外メディアでも報道されましたので(文末のURLを参照ください)、今回のメールマガジンは、委員会での東京証券取引所などとの議論を踏まえ、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)について、考えてみたいと思います。
オリンパス問題を取り上げた理由は、質疑の中でも強調しましたが、これが単に一企業だけの問題ではなく、日本全体のコーポレートガバナンスや株式市場の国際的な信頼低下に発展しかねない深刻な問題だからです。
これまでも日本異質論は幾度となく取り上げられてきましたが、海外メディアは大見出しで報じており、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、先月27日付の社説で、「日本企業のガバナンスは常に改革の入り口で足踏み状態にある。スキャンダルで改革への取り組みが進んでも、結局、企業幹部が説明責任を逃れるための新たな方法を見つける、ということが何度あったか知れない」と指摘しています。
オリンパス問題は、社長職にあった英国人のマイケル・ウッドフォード氏が先月14日、突然解任されたことで表面化しました。同社は解任の理由を「独断専行的な経営判断で組織間の連携を損なった」などと説明しています。
一方、ウッドフォード氏は、同社が平成20(2008)年、英国の医療機器メーカーを買収した際に、相場をはるかに上回る手数料を海外の投資助言会社に支払った理由や、国内の小規模ベンチャー3社を総額734億円の巨額で買収し、その年度末に計557億円の減損処理をした理由を問いただしたところ、解任されたと主張しています。
この騒動で、時価総額6千億円以上あったオリンパスの株価は9日現在で約三分の一になってしまいました。簡単に企業買収されてしまう水準です。
オリンパス問題以外でも、大王製紙の前会長がグループ会社から個人的に巨額の資金を借り入れていた問題が紙面をにぎわせています。「日本株式会社」はどうなってしまっているのでしょうか。
驚かれるかもしれませんが、米国の調査会社GMIによると、コーポレートガバナンスのランキングで日本は38カ国中33位で、ロシア、ブラジル、中国よりも下位となっているのです。その背景には、日本の上場企業は経営陣の多くが社内出身者で占められることや株式持ち合い慣行が根強く残っていることなどから、取締役会で経営のチェックが十分機能しないという点が挙げられます。
こうした認識に基づく私の質問に対し、東証の静正樹・常務執行役員は答弁の中で、「(最近の不祥事は)投資家からみると、日本企業のコーポレートガバナンスは実は機能していないという疑念が広がるような問題」と率直に語りました。
そのうえで、東証として平成21(2009)年に、すべての上場会社に対して、「独立役員」の選任を義務付けることをルール化したと説明しました。上場会社は、社外取締役または社外監査役の中から一般株主と利益相反が生じるおそれのない者を「独立役員」として1人以上確保し、東証に届け出るとともに、コーポレートガバナンス報告書において、「独立役員」の氏名と「独立役員」として指定する理由を開示することが求められるようになったのです。
しかし、静常務自らが、「イギリスやアメリカは取締役の過半数を独立性の高い取締役で構成するということが今や、グローバルスタンダード」と述べたように、日本の取り組みはまだまだ後手に回っています。
そこで、私は質疑の中で、民主党が公開会社法制定の検討を行っていることを紹介したうえで、「コーポレートガバナンスがもっと充実していたら今回の問題は起きなかったのでは」と問題提起をしました。公開会社法は、「取締役のうち社外取締役の人数を最低3分の1以上にする」ことが柱の一つです。
また法務大臣の諮問機関である法制審議会でも、社外取締役の選任の義務付けや、社外性の要件を今より独立性の高いものにするかどうかなどを論点に、会社法改正の議論を進めていて、年内にも試案がまとまる予定です。
答弁で静常務が、「長期的な企業価値の向上に資するような見直しがこの会社法改正を通じて実現するように今後も積極的に意見を述べて議論に参加していきたい」と明言したことは、心強く感じました。
オリンパスの問題にもどれば、今も次々と新事実が明るみに出てきていますが、まずは事実関係を徹底的に究明することが必要です。私は40分の質疑の中で、同社が第三者をまじえた第三者委員会を早急に立ち上げる必要性を強く訴えました。同社は今月1日付で元最高裁判事を委員長とする計6人の第三者委員会を発足させましたが、その報告が待たれます。
証券取引等監視委員会の岳野万里夫事務局長も、「第三者委員会がしっかりと検証を行っていくことが非常に重要」との認識を示しました。
第三者委員会が、審判役として十分に独立性を持ち、また専門性を持つことがやはり一番大事なことだろうと思います。最終的に第三者委員会が厳格な判断を下すことが明白であれば、社内取締役も、「怠慢な判断をすれば自分も株主に訴えられるかもしれない」と考え、彼らもまた厳しいチェックを行うだろうからです。
野田佳彦総理も、先日、英紙フィナンシャルタイムズのインタビューで、「日本が規制の行き届いた市場経済国であるという評判を傷つけるのではないかと懸念しており、同社に事実を完全に明らかにし、適切に行動するように求めた」と語りました。このインタビュー以前に、この問題を国会で取り上げたのは私だけですので、私の問題意識を受け止めてくださったのでしょう。
内視鏡の世界シェア7割という光学機器の名門メーカーが、名門としての矜持を保ち、しっかりと情報開示することを期待しています。
今回の騒動によって、オリンパスが上場廃止に追い込まれたり、金融商品取引法違反で刑事訴追を受けたりするのか、あるいは軽微な処分ですむのか、今のところ分かりません。しかし、今回の事件は一企業の問題ではなく、わが国の株式市場全体に対する疑惑に発展しています。政府も今後厳格な対応をする必要があります。
ロイター(電子版)10月27日
=朝日新聞(電子版)にも転載





