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2009年12月25日       

政府予算案と国債の増発について

 政府は平成22(2010)年度政府予算案を決定しました。一般会計の総額は92兆2992億円と過去最大の規模となりました。この不況期ですから大きな金額の予算を組むことは理にかなっているといってよいでしょう。

 まず、来年度の税収は37兆3960億円と昭和60(1985)年度以来最低額、いわゆる「霞が関埋蔵金」の取り崩しといった税金以外の収入が10兆6002億円となり、国債の新規発行額は今年度よりも33%増えて44兆3030億円となりました。予算の半分弱、48%を国債に依存することになり、当初予算としてははじめて税収総額を国債発行額が上回りました。

 さて、今回の予算を理解する上でのポイントは、前政権によって行われてきた政策との整合性を取らざるを得なかったことと、国民の皆さんの国債の新規発行をなるべく避けたいという気持ちが強かったことを予算編成の前提条件としなければならなかったことではないでしょうか。

 なるほど公共事業費はマイナス18.3%と過去最大の減少となりましたが、いくら減らしたいと思っても既に前の政権下作られてしまった施設のメンテナンスなどの後年負担分は省くわけにはいきません。ハードウエアだけでなく、さまざまな施策も今年急に打ち切るのではあまりに混乱を招くものの多かったでしょう。また、9月16日の民主党政権樹立以前に政府内での予算策定作業が進んでいたことも効率的な予算を作る上では悪影響を及ぼしたのではないかと推量します。

 同時に有権者の皆さんには、たとえ不況であっても国債の新規発行を増額したくないというムードがあったことは事実です。ここではその合理性について議論はしませんが、こういう声が強かったために、今回の平成9(1997)年の橋本失政以来最大の景気の落ち込みに際しても、前政権による今年度当初予算と第1次補正予算の総額を目安とした44兆円という国債の新規発行の「枠」を越えた大胆な歳出増が難しくなりました。

 この二つを与件とするならば今回の予算は非常に努力したものだと考えます。

 まずプロセスについて、事業仕分けにより予算査定プロセスが万人の前に明らかになりました。これまで各省庁の事務方が世間の目から隠れて行っていた各省折衝が大臣間の意見の食い違いという形で明るみに出ました。こういうことは積極的に議論をすればいいと思っています。

 各分野の予算額についてはどうでしょうか。社会保障関連費用ははじめて予算総額の半分を超え51%となりました。文教関連予算は、公立高校の実質無償化などにより5.2%増加しました。一方で、先ほど書きましたように公共事業費は、道路やダム関連の事業費を大幅に抑制したことなどから、18.3%と過去最大の削減が行われました。メリハリをつけた予算だといえるでしょう。

 残念なことはマニフェスト関連の予算が削減されて、3兆円あまりとなったことです。子ども手当とガソリン税暫定税率については、前に書きましたが、私としてはあと4兆円、国債の増発を行ってもマニフェストは完全実施すべきだったと考えています。

 なお、今回の国債の増発について、次の世代に負担を残す、国債の消化が難しい等のコメントがありますが、この点については、現在の経済情勢を与件と考えるのならば、今回の増発による金利の引き上げはほとんど起こらない、むしろ下がるくらいだと考えます

 以下、きわめて大胆に簡単な計算をしてみます。

 不況は(いかなる経済学的立場を取ろうとも、すくなくとも事後的には)需要不足を伴います。となれば、家計もしくは企業といった民間部門に貯蓄過剰が起こります。今後の国債の価格を考える上では、既発分ではなく、来年度一年間の国債の需要と供給の関係を考える必要があります。おおざっぱに表現すれば、来年度の貯蓄過剰分以上の国債の発行が来年度行われれば、これまでの国債の需給によって決定されていた現在の国債価格よりも、今後の価格が下落する、つまり長期金利の上昇が起こります。

 来年度の貯蓄過剰分がどのくらいあるのか。簡単には計算できませんが、GDPギャップ分以上はないでしょう。GDPギャップとは、これまでの平均程度に生産設備が稼働している状態で得られるだろう経済規模から、この不況下の現実の経済規模を差し引いた差の金額のことを指します。つまり不況の程度を表す数字です。このGDPギャップについては仮定に大きく左右されますが、今年の7-9月期において-7.0%、約35兆円だという内閣府による推計があります。つまり、国債の新規発行額がこれまでの本年度での新規発行額である44兆円にGDPギャップ分のプラス35兆円で79兆円になれば確実に貯蓄過剰分を食いつぶすことになります。

 まあ、GDPギャップの半分が仮に貯蓄過剰分だと大胆不敵に仮定をし、その過剰分が全部国債に投資されると仮定(こちらはさほど大胆でない仮定)すると、国債の新規発行額がこれまでの本年度での新規発行額である44兆円にGDPギャップ分35兆円の半分の17.5兆円で52.561.5兆円になればそこで均衡するということになります。

 実際の来年度の国債増発額は44兆円をわずかに超えるにとどまっていますから、こうした目の子算を参考にしたならば、我が国経済が景気回復に向かわない(つまりGDPギャップが存在し続ける)と仮定すれば、むしろ今年は国債の価格は若干上昇する(長期金利は若干低下する)はずです。

 また、単年度の貯蓄過剰分ではなく、家計において『高所得層を中心に100 兆円を超える過剰な貯蓄額が存在する可能性がある。』とするNIRAのレポート『家計に眠る「過剰貯蓄」』があります。昨年の11月のレポートですが、この状況は変わらないと思いますので、このお金は消費にはまわらないでしょうが貯蓄には当然まわりますのでその分を当てにしてもいいでしょうし、同時に企業内にも日銀短観によれば大企業の資金繰りはずいぶんと楽そうですので、貯蓄過剰分がずいぶんあると思われます。

 ここで、国債価格の動向に大きな影響を与える、資金の国際間移動を考慮に入れることは大変難しいでしょうが、少なくとも日本の場合、固定相場制でもなく、公債の海外での消化は6%程度に過ぎませんから、為替レートの急落は起きそうにありませんので、例えばアルゼンチンのようなデフォルトが起きそうな条件ではありません。日銀はデフレファイターとしてはものの役に立ちませんが、インフレファイターとしては世界最強ですし。(これは皮肉です。)だから国債暴落ということはこれらの条件が変わらないかぎり起きません。

 国債増発についてこれまで書きましたのは、単なる頭の体操であり、決して詰まった議論ではありません。まったく個人的見解であり、決して投資の参考などにはなさらないでいただきたいのですが、国債の消化を気にする議論が金融関係者やマスコミから出されていますので書いてみました。決してむきになって反論なさらないでください。


はてなブックマークで計算違いをご指摘いただきました。お恥ずかしい。訂正いたしました。 solidarnoscさん、ありがとうございました。m(_ _)m
solidarnosc 予算, 財政 44+17.5=61.5のはずだが、、私が何か勘違いしてるかな。エコノミストって足し算も出来ないのか?→ 「新規発行額である44兆円にGDPギャップ分35兆円の半分の17.5兆円で52.5兆円になればそこで均衡」 2009/12/26


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コメント (1)

■鳩山予算案 恒久財源なき公約危うい-来年の大学受験生はだれも合格せずとマスコミが言い?!

こんにちは。過去に自民党に対しても、愚かな批判を繰り返してきた、マスコミが鳩山予算案について、また愚かなことを言っています。このブログを見る前にいくつかのブログを見てみましたが、すべてマスコミに操作されたような内容でゲンナリしました。しかし、このブログを見てわが意を得たりという気持ちになりました!!日本は、実は財源的にはかなり恵まれています。このようなマスコミにのせられている、今の日本は、一昔前の私の同級生の女の子の家庭のようです。この女の子、医大を受験しましたが、受験直後に涙をためて、「落ちた」と語っていました。しかし、現実にはトップ合格です。とにかく、日本は財政的に問題があるという考え方は、完全に間違いでこれは、10年以上前から、リチャード・クー氏がバランス・シート不況として語っていたことです。なお、当時クー氏が、周りの人にBS不況について、話をして理解を示してくれた人は、麻生太郎、亀井静香、中曽根康夫の三氏のみだったそうです。最近では、経済評論家の三橋貴明さんが、本当にわかりやすく解説しています。ここに書くと本当に長くなってしまいます。私のブログもこれをわかっていただきたく、相当長くなってしまいしましたが、他意はありません。詳細につきましては、ここに書くと本当に長くなってしまいますので、是非私のブログをご覧になってください。

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金子洋一プロフィール


現在、民主党参議院議員(神奈川県選出)、生活支援カウンセリング協会理事長。

これまでに、経済企画庁(現・内閣府)
OECD科学技術産業局エコノミスト
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科兼任講師などを経る。

専門は、マクロ経済(景気)と消費者問題。詳細なプロフィールはこちら

 なお、このブログの記事内で意見にわたる部分は、私の個人的見解です。いただいたメッセージは私本人が必ず読ませていただき、今後の政策作りの参考にさせていただきます。直接ご返事を差し上げる場合もありますので、できればお名前とメールアドレスをお書きください。

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