《その頃、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博はある政府関係者からこう言われていた。「山梨はあまり騒がないほうがいい」。荒木がその真意を理解するのは、それからほぼ1か月後のことだった。》のっけからミステリーじみた出だしで恐縮ですが、昨日、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博さんの講演を聴いてきました。
(【1】家族の思い : 失踪25年(読売新聞))
今、北朝鮮問題といえば、核問題とならんで金正日の後継者問題が注目を集めていますが、まず荒木さんが取り上げたのは、山梨県の特定失踪者、山本美保さんの事件です。
荒木さんの講演の大意をひと言でいえば、『警察と当時の小泉純一郎政権の官邸関係者が、日朝国交交渉の推進をもくろみ、世論の障害となる拉致問題の火消しのために、DNAデータを捏造し、まったくの別人の遺体を山本美保さんだとした』というのです。
山本美保さんは、昭和59(1984)年6月4日に、山梨県甲府市で失踪しました。その後、特定失踪者問題調査会により、北朝鮮による拉致被害者である可能性が強いとして、特定失踪者リストに載せられました。ところが、それから年月もたった平成15(2003)年、双子の姉妹である美砂さんの血液を採取し、そのDNAデータ鑑定の結果、失踪直後に発見された水死体が美保さんであるとして警察から発表がありました。ところが、警察が行ったとするDNA鑑定以外には、水死体と美保さんをつなぐ遺留品や身体的特徴がないため、美保さんの家族や支援者たちはこの警察の発表に疑問を抱き、真相の究明を求めて活動してきました。
問題となる山本美保さんのDNAデータ偽造については、支援者から警察に送られた質問状に対する回答が、失踪から25年を経た6月4日にありました。そのことを報道した記事は以下の通りです。
《『特定失踪者問題に県警回答 調査会「納得できない」』このあたりについては、「荒木和博ブログ」のこのエントリーをご覧いただきたいのですが、山梨県警による回答書は役人の文章としても極めて出来の悪いもので、説得力がありません。
山梨 2009.6.5 02:50
北朝鮮に拉致された疑いがある特定失踪(しっそう)者、山本美保さんの失踪から丸25年となった4日、双子の妹、森本美砂さん(45)らが寄せた質問状に山梨県警が回答した。会見した森本さんや特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は「回答には納得できない」と憤った。県警は平成16年3月、失踪から17日後に山形県の海岸に漂着した遺体とDNA鑑定で一致し、同一人物と発表。ただ遺留品とする下着のサイズや身体的特徴などが異なり、森本さんらは16年に続いて質問状を提出した。県警は回答書で鑑定の正当性を主張し、下着のサイズなどの点は「身体特徴を含め捜査を継続している」と記すにとどまった。
森本さんは「事実を伝えてもらえないという疑念だけが残った」、荒木代表は「国会に質問主意書を提出するなどして、見解をただしたい」と述べた。一方、担当した県警警備1課は「ノーコメント」とした。》
(特定失踪者問題に県警回答 調査会「納得できない」)
先ほども少し書きましたが、このようなDNAデータ偽造の背景には、北朝鮮との国交正常化交渉をどうしてもはじめたかった当時の小泉純一郎政権の思惑があると、荒木さんはおっしゃっています。単に国交回復のためだけに訪朝するのでは、世論も反発するだろうけれども、拉致解決のためと称すれば誰も反対できないはずだと考えたのだろうというのです。本当であれば、まさしく国を売る行為であり、とうてい認められることではありません。また、荒木和博さんから講演後に個人的に、指示したであろう人物の名前を教えていただきましたが、公表は差し控えます。
以前に、拉致被害者家族の会の増元照明さんが、このようにおっしゃっていました。
《拉致被害者家族の会が、小泉前総理に面談するときも、官邸は、「会談時間は10分だけ。署名は受け取らない。有本さんの家族は来るだろうな。」と念を押してきた。有本さんの家族が来ればテレビにも映る。テレビに映って人気をとることが目的だったのだろう。政権の不作為のみならず、拉致問題を利用して日朝国交正常化をねらったとしたのなら、重大な批判に値します。小泉前総理との面談中も、小泉前総理はたった5メートル離れている増元照明さんにほとんど聞こえてこないような、蚊のなくような声でしか発言しなかった。テレビカメラの前ではあれだけ雄弁なのに。なぜなのか。関心がないのだろう。》
(増元照明さん講演会の詳細について)
本当に恐ろしい事件です。私が不正確にご紹介するよりもぜひとも以下のリンクをたどって事件について知っていただきたいと思います。
荒木和博ブログ
読売新聞山梨版 失踪25年
山本美保さんの家族を支援する会





