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2008年11月17日       

給付つき税額控除制度、導入へ

森信茂樹編著「給付つき税額控除の研究」

 給付つき税額控除制度がわが国にも導入されそうです。もろ手をあげて歓迎したいです。

  《与党が年末に決定する税制改正大綱に、所得控除の恩恵がない低所得者にも社会保障給付をする「給付付き税額控除」を検討課題として盛り込む案が浮上した。民主党は昨年末に税制改革大綱で示しており、党派を超えた税制改正の流れとなりつつある。》
東京新聞:「給付付き税額控除」導入 与党も前向き検討:政治(TOKYO Web)

 この給付付き税額控除という名前は、聞きなれない名称ですが、すでに欧米では一般的となっている制度で、フリードマンの負の所得税を改良したものだと考えればよいでしょう。

 「給付付き」という意味についてですが、通常の手法による減税では所得税を納めていない課税最低限以下の所得しかない家計に対しては、もともと所得税を納めていないのですから減税になってもなんのメリットも生じないのですが、この「給付付き」税額控除の特長としては、一定の所得以下の家庭に給付金の形で政府からお金がきますので、所得税を納めていない極めて所得が低い層、たとえばワーキングプアと呼ばれる状況下にある人々やその他の理由で所得が低い方々に対してメリットを及ぼすことができます。

 今回の追加経済対策でとられた定額給付金と比較して、きちんと低所得者層だけに無駄なく届く点ではるかに優れています。もちろん実施までには、課税最低限以下の家計の所得を把握するための仕組み作りなどさまざまな制度が必要ですが、世界の主流はこのやり方になりました。

 またその給付の仕方も、子育て支援を目的として未成年の扶養家族がいる家計にだけ一定の金額をお渡しするとか、年齢や属性でウエイトを付けるなどさまざまな配慮を加えることによっていろいろな政策目的の達成の手助けをすることができます。

 さて、元日銀副総裁で現在、内閣府経済社会総合研究所長である岩田一政氏はこのように発言しています。

  《米国などで導入されている『給付付き税額控除』は、少し働くと(お金を)給付し、働くほど給付を増やし、一定以上の所得になると給付を打ち切って普通に課税する制度。仮に1年限りの減税でも、構造的な問題への回答になるやり方が望ましい》
内閣府経済社会総合研究所長・岩田一政氏インタビュー
 もちろん岩田一政さんがおっしゃっているように、極めて低所得なところに対しては、少し働けば、収入がどんどん上乗せになるような、勤労促進的制度にもできます。実際に勤労所得給付制度(EITC)などとよばれる米英の制度はそういう形です。

 しかし、我が国の場合は例えば母子家庭などはほとんどすべてのお母さんが働いてらっしゃるという点や、パートタイマーなど最低賃金ぎりぎりではたらく人々が多いなど労働市場の性格が諸外国とまったく異なり、給付つき税額控除制度に勤労促進的な意味合いを持たせる必要性はほとんどありません。つまり日本では働ける人はすでに大部分がきちんと頑張って働いているのです。むしろ問題となるのは、産休や育児休暇が取りにくいとか、機会費用が膨大だとか、あるいは根拠のない男女の賃金差があるとかいうことによって女性が働きにくいことです。(このあたりは昔、私が課長補佐として執筆に携わった平成9年版国民生活白書で取り扱いました。)まったく余談になりますが、我が国のこのような労働市場の性格を無視して最低賃金を論じたり、あるいは自助努力を労働者に求めたりしても意味はないと考えます。

 このようにさまざまな長所を持つ給付付き税額控除ですが、このあたりのことは先月発売になった森信茂樹編著『給付つき税額控除―日本型児童税額控除の提言』にくわしいです。といいますか、日本語の文献はこれしかないはずです。なぜそんなことまで知っているかというと、実は私も1章執筆しているからなのですね。(出版記念パーティーでもやりますか。)アマゾンでも送料無料で絶賛発売中(!)ですが、ぜひ図書館などでも結構ですからご一読をお勧めします。m(__)m

 そうそう、一言付け加えますが、実は、この給付つき税額控除制度は、消費税の逆進性緩和にも役に立つんですよ。


 

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» 給付つき税額控除制度はバラマキではない 送信元 金子洋一「エコノミスト・ブログ」
 民主党が給付付税額控除を導入することを本格的に検討していま... [詳しくはこちら]

コメント (4)

安室波平さん、どうもコメントありがとうございました。私の考える経済政策の取るべき順位の第一は、不況からの脱却です。その意味からは給付つき税額控除の実現は、限界消費性向が高いと考えられる低所得者層に対して給付を行う意味で、大変重要な政策です。そして、景気が回復すれば企業の体力も回復することでしょう。

安室 波平:

給付付税額控除には大賛成です。以下に理由を述べますが、ゆうたんさんの意見に少し反論させてください。 
今の税の集め方は、決して中立性があるとは思いません。それは、あまりにも給与所得控除等、控除が多すぎて高額所得者の税負担が、高くないこと。
単純にアメリカと比較して、年収1000万円の人の税負担は、アメリカの方が多いのでは。 それから、わたしの周りには怠け者はいません。知人の意見ですが、今の日本人の心は荒廃しているそうです。私も同じように、感じてます。              大賛成の理由です
1今、日本の一番低い最低賃金の年収は、130万円位でないでしょうか。これでは一人暮らしは無理ですよね。
民主党などのいうように、最低賃金を
1000円に上げられたらいいのだけど、今の経済状況では、とても無理。
2日本の相対的貧困率の高さ、数字は忘れましたが先進国では、アメリカに次いで2ばんめ。それと18歳未満の
子供がいる世帯の貧困率が、信じられない位高いこと。27%
3自分の力、努力では、どうしようも出来ない人達がいます。ダブルワーク、ワーキングプア、誰でもが聞いたことがあるはずです。格差が問題なのではなく、格差の固定が問題なのです。年越し派遣村に集まる多勢の人達が、すべて怠け者だと言うのでしょか。
以上の理由で給付付税額控除に賛成します。ただし夫婦共同申告を原則として。
ただ、これよりも優先してほしくない政策があります。労働者派遣法の製造業への原則禁止です。金子さんはどちらを優先したいですか?どれもこれも、弱者に対するものばかりとはいかないのでは。ある意味今は、企業も弱者ですから。それをするなら総量規制だけ。あとは景気が回復してからでしょう。又コメントします。

ゆうたんさん、コメントありがとうございました。コメント欄再開以来初めてのコメントです。

さて、ご批判の点について、少し次のエントリーでも取り上げます。

税の累進構造自体を否定することは私にはできません。

ゆうたん:

ろくに働かない怠け者に勤労者の税から取り上げた金をばら撒く制度ですね。あまりにも不公平です。

特定のグループにだけばら撒くのは税の中立性に反します。

フリードマンって新自由主義といわれるけど、よく読むとかなり社会主義的ですね。

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このページについて

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金子洋一プロフィール


現在、民主党参議院議員(神奈川県選出)、生活支援カウンセリング協会理事長。

これまでに、経済企画庁(現・内閣府)
OECD科学技術産業局エコノミスト
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科兼任講師などを経る。

専門は、マクロ経済(景気)と消費者問題。詳細なプロフィールはこちら

 なお、このブログの記事内で意見にわたる部分は、私の個人的見解です。いただいたメッセージは私本人が必ず読ませていただき、今後の政策作りの参考にさせていただきます。直接ご返事を差し上げる場合もありますので、できればお名前とメールアドレスをお書きください。

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