「M&A国富論」という著作が東大教授の岩井克人先生と佐藤孝弘さんの共著でこのたびプレジデント社から出版されました。必読の快著です。
この本は、いったい会社というものをどう考えるべきか、欧米流に株主が所有すると考えるべきなのか、それとも会社という共同体が存在すると考えるべきなのか。このともすれば神学論争になりそうな議論(実際に中世の唯名論と実在論の議論にそっくりかもしれません。)に対して、近年の話題となった「企業の買収」という側面からアプローチしたものと私は考えています。
岩井克人先生はいうまでもなく経済学の大家であり、またリフレ政策を支持なさっている方でもあります。私が大学で3年になり本郷に進学してゼミを選ぶときに、岩井克人先生は当時新進気鋭の助教授でした。しかしこともあろうに私は「不均衡動学なんて、若造がまた新奇なことをいって・・・」などと安直に考え、ゼミに応募しませんでした。しかし、学識はもとより人間的にも素晴らしい方で、応募しなかったことを今では大変に後悔しています。
もう一人の著者である佐藤孝弘さんは、弁論部の後輩で、経済産業省出身。3年間で役人生活に見切りをつけ、辞表をたたきつけるようにして退職し、なんとおにぎりやさんを東京の文京区根津の商店街に開いたという人です。私にはとてもそんな勇気はありません。今では店じまいしてしまいましたが、企業の本質とは何か、また、経営とはいかにあるべきかということをギリギリのところまで考え抜いたのでしょう、その経験を今回の著作に存分に活かしています。
さて、以前に
《最近の企業買収をめぐる混乱には、かなりの部分会社法などの法令が「未整備」なことが影響を与えているように思えます。》と書きました。この「M&A国富論」は問題の焦点となる会社法の改正を提案しています。また、
(会社法:「目的」がない法律)
《我々の社会の伝統や風習に裏書きされていない法律は、単なる呪文のようなもので、これ以上、無力なものはありません。》とも書きましたが、よくある思いつきのような、あるいは外国の制度を直輸入しようとするようなアイディアとは違って、この会社法改正案は我が国の国情にも合ったものです。
(会社は誰のものか:村上世彰氏逮捕に思う )
おそらく将来の会社法改正に、この案が取り入れられることだと思います。(実はこの本のあとがきには私の名前も出てくるのです。)経営共創基盤社長で『会社は頭から腐る』の著者冨山和彦さんと岩井克人先生の対談も収録されています。普通、学者と経営者の対談というのは話もかみ合わず盛り上がらないものですが、この対談は話のキャッチボールが大変にうまくいっています。ここも必読でしょう。リンク先のアマゾンなら送料無料です。会社法や企業の買収に関心のある方にはぜひともご一読をお勧めします。
「M&A国富論」 岩井克人、佐藤孝弘著 【目次】はじめに
第一章 「資本鎖国主義」VS「株主至上主義」第二章 アメリカ型ルール導入の実験と失敗
第三章 TOB価格による決着の問題点
第四章 株式会社の本質と敵対的買収
第五章 新しい会社買収ルールの創造
第六章 資本主義の変質と会社買収
第七章 種類株式の可能性
第八章 気概を持ってルールづくりを
特別対談 良い株主が、良い経営者を選ぶ、良い買収の仕組み 岩井克人×冨山和彦
おわりに






