《リチャード・ギアが北京オリンピックボイコットを呼び掛け、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所が「チベット」と名乗れないわけもご覧ください。》チベットでの中華人民共和国による虐殺に関してインド亡命中のチベット仏教(いわゆるラマ教)最高指導者ダライ・ラマ14世が、亡命政府の本拠地であるダラムサラで記者会見を行いました。
《中国当局が鎮圧した問題について、原因や死者数を把握するため、国際的な独立調査団が直ちに現地入りすることが望ましいとの見解を示した。》チベットが中華人民共和国のくびきから解放され一刻も早く平和と独立がもたらされることを強く望みます。
(ダライ・ラマ14世が会見、チベット暴動で国際調査を(読売新聞) - Yahoo!ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080316-00000032-yom-int
それにしてもダライ・ラマ14世の北京五輪については、「世界最大の人口を持つ文明国である中国には、開催の資格はある」
という発言は、闘争の場を限定しようとするもので、なかなか戦略的な発言です。こういう発言を聞いているとさすがに中華人民共和国とインドという2大国の狭間で生きてきた経験から来る賢さを感じます。ダライ・ラマ14世の目的はチベット民族の命や生活を守ることであって、中華人民共和国を何らかの手段で攻撃することは、手段ではありえるかもしれませんが、まちがっても目的ではありえません。あくまでも限定闘争にとどめておくことでしょうから、今回、今後事件がどのように展開するかは予断を許しませんが、一気にチベットを独立させることは、今回については要求しないことでしょう。
熱心なチベット仏教徒である俳優のリチャード・ギア自身もまったく同様に
《北京オリンピックについては、別の記者会見で「北京五輪自体はいいこと。だが、五輪開催とともにチベット文化や少数民族に対する抑圧など、真実が国内外に語られるべきだ」》と発言しています。
(リチャード・ギアが北京オリンピックボイコットを呼び掛け)
目前に迫った北京オリンピックを是が非でも成功させたい中華人民共和国政府の弱みをきちんと認識して交渉を進めていくことと、あとは、人権問題好きな米国人の心をいかにうまく掌握するか、この二つが基本戦略となるでしょう。すでに北京五輪ボイコットの動きも出ているようで、チベットにとっては大きな助けとなることでしょう。
それにしても、私がチベットといつも比較してしまうのは旧・満洲族です。経済的にもますます強大となる中華人民共和国と対峙する中でもチベットが国際的な支持を受けつつその民族的な団結を失っていないことと対照的に、康熙帝、雍正帝、乾隆帝と中華帝国の最盛期を現出するにいたった清朝の支配者であった満洲族は、独立の文化を持つ民族としては残念なことに各地に強制移住させられるなどして実質的に滅亡してしまいました。
国力としては比較にならないほど満洲族は強大でした。しかしなぜ一方は滅び、一方は民族としての生命を保ち続けているのでしょうか。この差は、ダライ・ラマ14世という指導者であり、宗教家であり、また民族統合の象徴である存在が健在であることと、清朝のラストエンペラー、宣統帝溥儀こと愛新覚羅溥儀が自己の保身のために中華民国や中華人民共和国の意のままに操られてしまったことにあると考えます。
溥儀が、満洲国崩壊後も中華民国や中華人民共和国による満洲支配の非正当性を強く主張し続ければ、彼個人の生命は危険にさらされたでしょうがその代償として満洲族のアイデンティティは保つことが可能だったでしょう。この点を意識するかどうかは、単に元首の個人的な能力の有無以上の意味を持つのではないでしょうか。
国や民族が外から抑圧を受けたり、あるいは経済的な苦境におちいることが、民族滅亡の原因にはならないことは、例えば紀元前からの中東の歴史をみれば明らかです。自らの有職故実を宗教にまで昇華したユダヤ人のたくましさを見るべきです。古代ユダヤの指導者の苛烈さと比較するといかにも宣統帝溥儀のふがいなさが際だってしまいます。彼らが行ってきたようにみずからのアイデンティティをきちんと保つことが最も重要であることは歴史の教訓として我々は忘れるべきではないと強く思います。






