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2008年03月11日

<日銀人事>総裁候補・武藤氏らの所信聴取 衆院議運で

 <日銀人事>総裁候補・武藤氏らの所信聴取 衆院議運で に詳しく書かれていますが、11日午前に行われた衆議院議院運営委員会での日銀後継総裁・副総裁候補者の所信聴取を踏まえての感想です。今回、明らかになったことは、やはり伊藤隆敏・東京大学大学院教授インフレターゲット政策を日銀がとるべきだと考えていることです。

 伊藤隆敏氏は、インフレ目標政策の採用を前提として話を進め、一般的な懸念に答え、インフレターゲット政策が、インフレをむやみに促進する政策ではないことにまで言及しています。ただ、「成長率の鈍化と一般物価上昇の組み合わせであるスタグフレーション」に対して懸念を示していますが、現代の日本のように、生産性が十分高い状態では原油などの一次産品の価格が上昇してもその心配は低いように私は思います。

 所信を踏まえて判断すると、明確にこれまでの日銀と異なった取り組みをすべきであるとしているのは伊藤隆敏氏のみであり、それゆえ伊藤氏だけが日銀の舵取りを任せるに値する方でしょう。

 副総裁候補の白川方明京大大学院教授は「金融政策の効果・波及には時間がかかることから、足もとの動向だけでなく、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要がある」と発言し、事実上、「中長期的なリスク」、すなわちインフレに過剰に気を配り、いわゆる金利の正常化を求めて金利引き上げを目指すという旧来からの日銀と同様のスタンスを明らかにしました。日銀の幹部としては優秀な方なのだろうと思いますが、 前回の日銀後継総裁問題に関するエントリーでも申しましたが、日銀内部の勢力に引きずられていることが明らかになってしまう発言をこうも簡単にしてしまうということは、日銀の手綱をとっていくべき副総裁としてはこずるさが足りないのではないかと思います。

 一方、「綿密な情勢分析と機動的な政策運営を通じて、長い目でみた物価と経済の安定に貢献していきたい」と述べた総裁候補の武藤敏郎・現日銀副総裁の所信は、一見わかりにくいかもしれませんが、「機動的な政策運営」というのは、財務省用語では「構造的、根本的な枠組みはそれ以前と変えずにただ政策を微調整していく」という意味だと私は理解していますので、事実上何も新しいことはやりませんと宣言したに等しいのです。

 また、武藤氏は「日銀の独立性をしっかり確保したい」と発言していますが、そういう日銀内部を安心させることが目的とした発言をすることが期待されている場所ではありません。(追記:後になってこの発言は財金分離論への配慮だと気がつきました。)そんなことをいっている暇があるのなら、例えば、「今までの日銀の政策に民間企業の景気実感をきちんと取り入れて云々」といった発言をすべきではなかったのでしょうか。今の日銀は金融市場との対話ばかりで実体経済との対話ができていません。きちんと民間企業と向き合う必要があります。

 とにかく、武藤敏郎氏の存在自体が与野党の攻防の焦点ですし、金融政策は公債の問題にも重大な影響がありますので、プレゼンテーションにももう少し工夫が必要だったのではないでしょうか。きちんと政局を読めているのでしょうか。わずかな期待も裏切られた感じがして残念です。まあ、武藤氏のような戦後最長の大蔵事務次官を勤めた方からみれば、やはりこういうときにはサプライズで一発かますべきというのは政治家の総決起集会での演説的な発想なのでしょう。

 武藤敏郎氏への評価は保留しましたが、どちらにしても今回の所信から判断する限りではふさわしくないといえましょう。

 米国では、以前にも述べましたように当局によるサブプライム住宅ローン問題に対する迅速な対応が取られ、来週にも再びFRBによる追加利下げが予想されています。事情が違うとはいっても、その中でこの危機感、スピード感のなさです。定職についていて首になる可能性がなく、デフレになれば逆に実質的に賃上げになるような方々(まさにこの「賃金の下方硬直性」というメカニズムが民間企業を苦しめているのですが。)に政策判断をさせていてはだめなのでしょうか。きわめて残念です。

 今回の所信を材料にすると、武藤敏郎氏、白川方明氏の政策については空気を読む能力を含めて低い評価を下さざるを得ません。この判断が外れていることを祈るばかりですが、なんとか伊藤隆敏氏を日銀総裁にすることはできないものでしょうか。

 

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