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2007年11月16日

米国、インフレターゲット導入見送りの本当の理由

 米国の中央銀行にあたる連邦準備制度委員会(FRB)のバーナンキ議長は14日の講演で、連邦準備制度委員会や、我が国の日銀金融政策決定会合に当たる連邦公開市場委員会(FOMC)の意思決定過程の透明性を高めるために、これまで年2回だったFRB経済見通しの公表を4回にふやすことなどを明らかにしました。いわば「市場との対話」政策の一環ですが、いうまでもなく正しい方向だと考えられます。

 また、米国は日本と並んで先進国の中ではインフレターゲット政策を導入していない数少ない国ですが、その理由は、米国では、物価安定のみでなく、雇用の確保も中央銀行の目的とされているため、政策手段をすべてインフレ退治に向けるわけにはいかないという理由によります。

 失業率が平均的なレベルよりも下がることは、景気が過熱したことを意味しますが、そうなれば生産力の限界に近づき、人件費=物価が上昇しインフレになります。逆に、失業率がさがるということは、景気が悪化することを意味しますから、生産力に余裕ができ、需要が少ないこともあって物価が下落します。ほかの条件を省略して考えれば、人件費だけが上下するモデルだと考えればいいでしょう。

 この関係を一般物価と失業率を縦軸と横軸にとると相関関係を見て取ることができ、結果的に曲線が描かれます。これがフィリップス曲線です。

 このフィリップス曲線で表されるように、失業率とインフレ率はトレードオフ関係にあります。

 仮に、金融を過度に引き締めるなどして、物価を下げすぎれば、同時に景気が悪化し、物が売れなくなり、結果として失業率が上がってしまいます。金融政策というひとつの政策手段しか持たない連銀が、物価と雇用という二つの政策目標を達成することは、もちろん簡単ではありません。

 さて、インフレターゲット政策にもどります。インフレターゲットは必要だというのがこれまでのバーナンキ議長の主張でしたが、今回FRBは、インフレターゲット政策の導入を見送ることになりました。

 今回の連銀の決定について、我が国のマスコミではインフレ目標(インフレターゲット)政策を見送ったことだけが強調されています。

  《インフレ目標の導入見送りについてバーナンキ議長は、「『物価の安定と雇用維持』というFRBの使命に適合しない部分もある」と説明した。》
インフレ目標導入FRBが見送り: YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 この報道をサラッと読むと、インフレターゲット政策自体の実効性に疑問が持たれて導入されていないようにも読めますが、実際にはそういうことではありません。

 むしろ導入されなかった理由は、インフレターゲット政策自体の問題ではなく、通貨の信任を短期的に追い求めすぎることが原因で、インフレ率を下げすぎて、経済成長が損なわれ、自然失業率を超えて失業が増える可能性があることを米国の世論なり第三者が懸念しているというのが真相です。ようするに、「中央銀行は、物価の安定だけにかまけずに、雇用の確保や景気にもきちんと気を配れよ」というのが米国の一般的な世論である、そういうことです。

 さて、今回、連邦準備制度委員会がインフレターゲット政策を採用しなかったことに対し、日銀内部には安堵感が漂っているという報道があります。

  《「経済規模の大きい国では物価だけに目標を定める手法は無理」。ある幹部はバーナンキFRB議長の講演にこんな感想を漏らす。》
日銀、影響回避に安堵・FRBインフレ目標見送り
 本当に日銀が、安堵していていいのでしょうか。これまで書いてきたことを踏まえれば私には大いなる勘違いにしか思えませんが。


 

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