政治家のスキャンダルが続発する中で、政治と金をめぐる報道も相次いでいます。しかし、あえて申しますが、こんなことまで大きく取り上げるべきか疑問に感じるものも少なくありません。
例えば、自民党の上川陽子少子化・男女共同参画担当相の例です。
《自民党の上川陽子少子化・男女共同参画担当相(衆院静岡1区)は5日、2000年6月の初当選以来の資産報告書について、貸付金に記載漏れがあったとして、衆院に訂正を届け出るとともに、補充報告書を提出した。 上川氏は00年6月、03年11月、05年9月の衆院選時の資産報告書について、貸付金をそれぞれ「該当なし」から、「968万円」「1118万円」「798万円」に訂正。 また、00年分と06年分については、それぞれ貸付金が「150万円」「400万円」増えたとして、補充報告書を提出した》
(Yahoo!ニュース - 時事通信 - 上川少子化相も記載漏れ=資産報告書の貸付金を訂正 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070905-00000201-jij-pol)
この上川陽子氏の例ですが、この貸付金の貸し先は自分の資金管理団体だそうです。つまり、簡単に言えば、自分の後援会の活動資金が足りなくなったので、自分の懐から貸付という形でお金を補充したということです。
私も、民主党の一員として収入が乏しい中で政治活動をしました。後援会活動には大金がかかります。事務所を維持していくにも、人件費やガソリン代、その他で月に数十万円かかります。とても皆さんからいただくカンパだけで維持できるものではありません。
党からいただく、支部政党交付金は政党活動にしか使えませんので、自分の政治活動については当然、自分の懐からの持ち出しになります。後援会も毎年会計報告をしなければなりませんので、帳簿上の扱いを考えなければなりませんが、この場合は、自分から、自分の後援会に寄付の形にするか、あるいは貸付の形にする必要があります。
ところが政治団体に対する寄付は、個人で行うものに限り可能であり、しかも一人年間150万円という上限が定められています。団体からの寄付もだめ、年間150万円を超えてもだめです。これにふれれば政治資金規正法違反になります。
これに関しては、少し前に、選挙管理委員会の大元締めである当時の総務相、菅義偉氏が、ご自分の問題で、
《菅義偉総務相が所有するビルに「主たる事務所」を置く自民党県第2選挙区支部(代表者・菅総務相)と後援会が事務所費を計上していた問題で、菅総務相は25日に東京都内で記者会見し、持参した領収書の束を示しながら「たとえ代表者の所有物であっても、政治団体なので家賃を支払うのは当然」「これ以上やりようがないくらい明快にしている」などと適正な処理だったことを強調した。》と述べています。
(Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - 菅総務相:事務所費問題 「これ以上なく明快」 領収書示し適正を強調 /神奈川
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070826-00000121-mailo-l14)
私は、この菅義偉元総務相の見解に個人的にですが同意します。じぶんのものではあっても後援会という政治資金規正法の対象となる政治団体に、菅義偉氏個人が所有のビルの一室を無料で使わせることは、あきらかに寄付であり、賃料は月36万7500円ということですから、年間で441万円で、150万円をらくに超えます。賃料を支払わなければ、年間の寄付の上限を超えるか、記載漏れかで政治資金規正法違反となります。こちらの方が重大ではないでしょうか。
寄付に年間150万円以下という縛りがある以上、残された方法は貸付だけです。
ところがまじめにやっている限り、政治活動というものは儲かりません。おそらく私や上川陽子氏にかぎらず、自分の後援会に貸付をした政治家は、そのお金が絶対戻ってこないものとみなしているでしょう。
例えば、中小企業のオーナー社長も、自分の会社に運転資金や設備投資資金を貸し付ける場合が多いと思いますが、中小企業に対する査定では、こういった借入金は、実際には自己資本としてみなされるということです。会社も個人の財布も明確には分かれていないのです。
政治家の場合も、特に派閥の長などでは違うでしょうが、通常の場合、後援会に対する貸付を自分の資産だとは意識していないはずです。戻ってこないからです。私もそうです。あれが本当に個人の資産なら、我が家のバランスシートはきわめて健全、妻も親戚もニコニコしているはずです。ところがその実態はといえば残念ですが火の車です。
冗談はこれくらいにしますが、こういった事情で、上川陽子氏は自分の後援会に対する貸付を資産報告書からついうっかり落としてしまったのだろうと考えます。私も、平成15(2003)年の衆議院選挙では、最終的に東海比例区で次点まで繰り上がりましたが、あれで当選していたら確実に自分の後援会への貸付金を報告し忘れていたでしょう。自分ができないことを他人に求めるのは偽善です。
もちろんこの資産報告書は、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律(資産公開法)」に基づいて報告されるものですから、間違いがあれば訂正されるべきものですが、それにしても世間の扱いは、なにか重大な犯罪を犯したかのようないいぶりです。これには私は納得がいきません。この点に関しては、政治の実態と、法令を踏まえて、もう少しバランスの取れた報道が必要であると考えます。





