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2007年07月02日       

久間章生防衛相の「原爆投下容認」発言

 「原爆投下容認」発言について、久間章生防衛相自身としては、話の本筋でないところで批判を受けていると考えているとは思います。長崎県選出の衆議院議員でもあり、原爆投下の惨禍については十分ご承知ではあるのでしょう。ご本人は、原爆投下を容認したわけではないのでしょう。その点を私は疑うつもりはありませんし、疑うことによってむしろこの発言の問題性を矮小化させてしまう可能性すらあると考えます。

 私が考えるこの発言の持つ問題性は、原爆投下の容認云々にはなく、日本政府の閣僚による発言として今後我が国に大変な不利益を与える可能性があることです。

 以前、原爆については以下の通りに論じました。

国際法を蹂躙する大量破壊兵器である原子爆弾が、連合軍の手で広島に、そして長崎に落とされました。何十万人もの方々が虐殺され、いまだに後遺症に苦しむ方々もおいでです。まさにナチスの強制収容所にも比肩するHiroshima Atrocity もしくはNagasaki Atrocityと呼ぶべき残虐行為でした。これらの「大虐殺」を我々は忘れてはなりません。そして、このようなことが再び繰り返される過ちは決しておかしてはなりません。(先の大戦をどう考えるのか:被爆クスノキ2世の植樹
 ここで引用したことについては、考え方は変わっていませんが、付け加えるならば、我が国政府としては、この問題に関して、以下の点を主張すべきだと考えます。
1.原爆投下は国際法違反の非戦闘員に対する大量虐殺であること。
2.東京裁判の判決を受諾はしたが、東京裁判自体の中で連合軍による戦争犯罪は一切取り扱われていないこと。従って連合軍による戦争犯罪の問題は、少なくとも道義的にはいまだ解決していないこと。
 久間章生防衛相の発言は、こういった点に一切配慮しておらず、このような発言を放置しておけば、今後他国との外交交渉において大いに不利益を被る可能性があります。

 これまでの国家間の戦争は、武器を持って戦う戦争、にらみ合う冷戦といった形式のものがありましたが、国際世論の反発が強いことが予測されるなど戦争のコストが増大したことによって、新種の戦争が生まれてきました。

 最近、エストニアに対してロシアが行ったのではないかといわれた極めて大規模なDoS攻撃などによるサイバーテロもその一つですが、それとはまったく異なった形態として、従軍慰安婦問題にもみられるように、過去の歴史をどのように解釈するかという「歴史戦」とでもいうべき、戦争の新たな形式が生まれています。この「歴史戦」の一つの形態として過去の歴史的事実の再解釈の国家同士の競争があり得るわけで、米国下院における従軍慰安婦問題決議においては我が国は歴史的事実の解釈競争に敗れたと考えることができます。

 特に、米国のように外交問題とモラル問題を直結させる癖のある国が関わってくる場合、この歴史戦での敗退は我が国にとって重大な問題となる可能性があります。こういったことについて、現職の防衛相のポストにある人間が、原爆投下の問題点を認識せずに発言してしまうことが、今後の歴史解釈競争において大きく足を引っ張る原因となりかねないのです。


久間章生防衛相発言

「ソ連、中国、北朝鮮と社会主義陣営、こっちは西側陣営に与したわけだが、欧州はソ連軍のワルシャワ条約機構とNATO軍が対立していた。そのときに吉田茂首相は日本はとにかく米国と組めばいいという方針で、自由主義、市場原理主義を選択した。私は正しかったと思う。 これは話は脱線するが、日本が戦後、ドイツみたいに東西ベルリンみたいに仕切られないで済んだのは、ソ連が侵略しなかったことがある。日ソ不可侵条約(※正しくは日ソ中立条約)があるから侵攻するなんてあり得ないと考え、米国との仲介役まで頼んでいた。これはもう今にしてみれば、後になって後悔してみても遅いわけだから、その当時からソ連は参戦するという着々と準備をしていて、日本からの話を聞かせてくれという依頼に対して「適当に断っておけ」ぐらいで先延ばしをしていた。米国はソ連が参戦してほしくなかった。日本の戦争に勝つのは分かった。日本がしぶといとソ連が出てくる可能性がある。
 ソ連が参戦したら、ドイツを占領してベルリンで割ったみたいになりかねないというようなことから、(米国は)日本が負けると分かっていながら敢えて原子爆弾を広島と長崎に落とした。長崎に落とすことによって、本当だったら日本もただちに降参するだろうと、そうしたらソ連の参戦を止めることが出来るというふうにやったんだが、8月9日に長崎に原子爆弾が落とされ、9日にソ連が満州国に侵略を始める。幸いに北海道は占領されずに済んだが、間違うと北海道はソ連に取られてしまう。
 本当に原爆が落とされた長崎は、本当に無傷の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなという風に思っているところだ。米国を恨むつもりはない。勝ち戦と分かっている時に原爆まで使う必要があったのかどうかという、そういう思いは今でもしているが、国際情勢、戦後の占領状態などからすると、そういうことも選択としてはあり得るということも頭に入れながら考えなければいけないと思った。 いずれにしても、そういう形で自由主義陣営に吉田さんの判断でくみすることになり、日米安保条約で日米は強く、また米国が日本の防衛を日本の自衛隊と一緒に守るということを進めることで…。戦後を振り返ってみると、それが我が国にとっては良かったと思う。」

「原爆を落とした、落とされたのは返す返すも残念だし、あんな悲劇が起こったというは取り返しの付かないことになったわけだが、しかしそういう歴史を振り返ってみたら、「あのときこうしていれば」と後悔してもしょうがないわけだし、とにかく今みれば米国の選択というのは米国からみればしょうがなかったんだろうと思うし、私は別に米国を恨んでいませんよとそういう意味で言ったわけだ。「しょうがない」という言葉が、米国の原爆を落とすのがしょうがなかったんだということで是認したように受け取られたことは非常に残念だ。」
(産経新聞記者阿比留瑠比氏「国を憂い、われとわが身を甘やかすの記」より引用)

 

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金子洋一プロフィール


現在、民主党参議院議員(神奈川県選出)、生活支援カウンセリング協会理事長。

これまでに、経済企画庁(現・内閣府)
OECD科学技術産業局エコノミスト
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科兼任講師などを経る。

専門は、マクロ経済(景気)と消費者問題。詳細なプロフィールはこちら

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