「駅前留学」で有名な英会話スクール「英会話NOVAノバ」に対して経済産業省は、特定商取引法に基づく業務停止命令を出しました。
これは、予約が取りにくい時間帯があるにもかかわらず、契約時にそのことを伏せて契約したという「不実の告知」を行ったという理由です。その他にも、特定商取引法の条文6項目、18種類にも及ぶ違反があり、経済産業省によると「一つの会社で、これだけ多くの違反行為を指摘するのは異例」だそうです。
「英会話NOVAノバ」、実は私も昔半年ほど通いました。平成5(1993)年の年末から翌年の7月まで。人事院長期在外研究員で渡英するための準備のために、正確な金額は覚えていませんが35万円ほどの受講料を前払いで支払いました。仕事の関係で平日にはとても通えませんから、週末に集中的に通うためにわざとビジネス街にある教室を選びました。家からは遠いので通学には時間がかかりますが、ビジネス街なら土日は空いていますから。結局、地下鉄虎ノ門駅から、歩いて2~3分のまさに駅前にある虎ノ門校に入学しました。
私のTOEFLスコアは617点と、当時としてはなかなかの成績、のはずでしたが、最初の面接で、日本で演劇をやっているという若い英国人女性のクイーンズイングリッシュがまったくといっていいほど聞き取れず苦戦を強いられました。
例を挙げれば、"water"をイギリス発音で"ウォオタ"と発音され、意味が分からず、「What is "ウォオタ"?」と聞き返したところ、あきれた顔で「"ミズ"」と「ズ」にアクセントをおいたちょっと不思議なイントネーションの日本語で返されたことは今でも忘れられません。このような大学卒業をした人間とは思えない大ミスをはじめとして、凡ミスを連発した結果、なんと下から三番目の7Aとかいうクラスに入れられました。まあ、英会話レッスンなどほとんどしてませんから仕方なかったのです(いいわけ)。しかし、入学してからは、まじめに通ったこともあり、昇級に必要な最短の授業数でクラスがどんどんあがっていきました。
週末にビジネス街の学校ということで私のもくろみはまんまと当たり、3人までの少人数制を売り物にした英会話レッスンは、3人全員ということはあまりなく、1人だけという個人レッスンであることもしばしばでした。
講師は、オーストラリア、ニュージーランドのオセアニア勢が多かったものの、世界各地から来ていました。あと、中国系の講師はいましたが、黒人はいませんでした。これが、人種差別的発想で行われていたのかどうか確かめるすべはありません。
また講師陣の職業は、政治学を研究に来たというオーストラリア人男性、トロント大学OBのカナダ人男性などいろいろ。ニュージーランド出身で、バーの用心棒(bouncer)をしていたという屈強の男性もいました。皆なかなか教え上手だった記憶があります。楽しい思い出でした。
結局、英会話レッスンの方のポイントはほとんど使い切りましたが、英会話を実践的にマスターすると称して、大部屋で講師と他の生徒大勢がしゃべるVOICEという英会話コースは、半分くらい残ってしまいました。払い戻しはしてもらっていませんが、個人的には十分満足できる授業の質だったと思います。それ以降、経営方針も講師もかなり質は落ちたのでしょうか。
当時、英会話学校の設立がブームになっており、急成長業界につきものの違法すれすれの商法がまかり通っていました。ひどい例になると、何十万円単位の受講料をごっそりと集め、計画倒産するなどというひどい例もありました。その会社は銀座に大きな電光看板を出していたことをよく覚えています。
この当時から英会話NOVAノバは、今と同じポイント制の受講料を取っており、英会話コースを申し込んだが途中解約をしたくても返金をしてくれないなどという消費者からの苦情が各地の消費生活センターや国民生活センターに多数持ち込まれていました。このため霞ヶ関の消費者行政関係部署では既に問題になっていました。その時には担当省庁から明確な対応はされていなかったと記憶します。
事業が急成長すると、その業界の中でシェアを争い、その結果モラルが緩んできてしまうことが最近の企業不祥事の共通点ではないでしょうか。
利潤最大化ではなくシェア最大化をめざして争うことはかつて日本的経営の欠点として指摘され、過去のものとなったと思っていましたが、昨今のインターネットでの事業がシェア争いを重視するものであることの模倣でしょうか、そのような経営手法が最近めだっている気がします。確かに、宣伝広告費などはシェアがトップであろうと小さかろうと同じ金額がかかりますが、リアルの世界ではデファクトスタンダードとなるというネット上の戦略が有効であるかどうか分かりません。
それでも、英会話NOVAノバは、英会話ブームが終わり業界の急速な成長が終わった中で、2005年からの2年間で約300校を開講するなど、シェア獲得を直接の目的とした事業展開をしていました。直接はこのような事業展開が災いとなったのでしょう。
通常の英会話学校の半分以下の授業料で安価に英会話レッスンを提供するという、規模の経済を追求するビジネスモデル自体は機能することは確かでしたから、業界最大手とはいえ一社の失敗でこのビジネスモデルが消し飛んでしまうことはもったいない気がします。
とはいっても消費者を犠牲にしては、長い目で見ればそのビジネスモデルは続きません。需要と供給がマッチしてこそ事業が成立します。例えば英会話スクール業界全体の取り組みとして、消費者を保護する視点をもっと取り入れた強力な業界団体を作るなどしてなんとかこの苦境を乗り越えてほしいものです。





