尾鷲市の被害を予測したシミュレーションによりますと、震度6強の東南海地震、南海地震が正午に起きた場合、尾鷲市だけで、津波やブロック塀、建物の倒壊が原因となり、尾鷲市の人口の1割を超える2524人が死亡するという結果が出ました。
このシミュレーションは、群馬大学大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)によるもので、平成16(2004)年9月5日に発生した、紀伊半島沖、東海道沖を震源とした二つの地震のデータを元に尾鷲市のみを対象に行われたものです。当時の尾鷲市の住民の避難行動の実態を把握し、住民の動きを再現し、実際に津波が発生していた場合の被害を計算したものです。私もこの地震のあった日に、当時は尾鷲市議会議員で今は三重県議会議員(尾鷲市北牟婁郡選出)の津村衛さんをはじめとする皆さんにお見舞いの電話をしたことを覚えています。
2種類のシミュレーション結果が出ており、2524人死亡するケースはなんら避難勧告が出されなかったケース、もう一つは避難勧告が出されたケースで、こちらは1962人が死亡するという結果が出ています。
「夜あなたが自宅で家族と過ごしているときに大きな地震がありました。その1分後、テレビやラジオからは尾鷲市に津波警報が発表されたとの報道が放送されました。また、更にその2分後、市役所からは防災行政無線により避難勧告の伝達が行われました。そして、広報車による避難勧告の伝達も開始されました。あなたは電話で友人の安否を確認しようとしましたが、一度に沢山の人が電話を利用しようとしていたため、連絡をとることはできませんでした。 あなたは、マスメディアや市から伝達される津波情報を知った時、最寄の避難場所に避難しようと考えます。しかし、しばらく周囲の様子を伺っていたり、避難の準備を行っていたりして、実際に自宅を出発したのは情報を聞いてから20分後になっていました。」と、このような想定で行われた尾鷲市全域を対象としたシミュレーション、「動く津波ハザードマップ」もあります。群馬大学片田敏孝研究室 (災害社会工学研究室)のウエッブサイトをご覧ください。 三重県による東南海地震、南海地震での尾鷲市の被害の想定では、死者930人ということでしたが、こちらにはブロック塀の倒壊などによる道路閉塞の影響は入っていなかったそうです。道路閉塞の有無の違いで倍以上の違いが出ます。また、この地域は、地震の直接の被害だけでなく、津波の恐れもあります。このシミュレーションでも、約1200人が津波の被害でなくなるという結果が出ています。
このデータは尾鷲市だけですから、三重県南部沿岸に広がる三重5区の海沿い地域にはほぼ同様の被害が及ぶことでしょうから、南は熊野市から東紀州を経て、紀勢町、南島町、南勢町、志摩市、鳥羽市と対象となる人口は10万人を超えることでしょう。その大人口に、尾鷲市と同じ比率で被害が起きたら一体どうなるのでしょう。あらためて地震に脆弱なこの地域の特性を思い知りました。対策は急務です。
片田敏孝教授によりますと、道路閉塞は避難や情報伝達を難しくし、被害を大きくするそうで、具体的には、建物の耐震化やブロック塀の倒壊などにも配慮した災害対策が望まれます。
地方国立大学の経済効果に関するエントリーを前に書きましたが、群馬大学も年間597億円の経済効果があるということです。地元経済への貢献だけではなく、群馬とは縁もゆかりもないこの三重県にも役に立つ研究をしていただける、まさに公共財を提供してもらっているわけです。備品の調達は安いお店から購入していただいて、こういう研究に予算を十分振り分けていただければと思います。





