⇒李登輝前台湾総統が靖国神社に参拝しました。李登輝前台湾総統が、「行く時間があるか、日本に行ってみないと分からないが、東京に来て、60年以上も会っていない兄に会いに行かないのは弟としても人情としてもしのびないことだ」と来日途中の機内で述べて、今回の訪日中に、戦時中にフィリピンで日本人として戦死した兄の李登欽氏が「岩里武則」の日本名で祀られる靖国神社に参拝する意向を明らかにしました。
日本人のハートをわしづかみにしてしまう、なんと泣かせる発言でしょうか。
このニュースを聞いた時、私は、「そういう手があったのか!」と驚きました。そして私はこのような発想のできる李登輝前総統の戦略家としての腕前に感嘆しました。
兄を思う自然な心情はもちろん本当のことでしょう。しかし、もう一面で李登輝前総統は、いつ本省人だということで粛正されるかもしれない国民党政権下でじっと雌伏し、権力の座に就いた政治家です。その行動は、ただひたすら台湾を独立国としてきちんと育て上げたいという一念から、すべて中華人民共和国の動きを念頭に置いています。当然、最近の大陸による日本に対する微笑外交の効果については、危機感を抱いていることでしょう。それならばいっそのこと微笑外交につけこんで靖国神社参拝という大技を繰り出してみよう。その絶好のチャンスだ、と判断したに違いありません。
靖国神社には、2万8千柱の台湾人戦死者も祀られています。行く時間など、来てくれるなら靖国神社側からは真夜中でも歓迎されることでしょうし、ひょっとしたら近年途絶えている大国元首の参拝に糸口を付けるものとして既に話がついているかもしれません。
一方で、中華人民共和国の動きはどうでしょうか。麻生太郎外相は、28日の楊外相との日中外相会談で、楊外相からの李登輝前総統訪日に関する発言に答えて、「今回の訪日は観光旅行および学術交流で、政治活動ではない」と述べました。(私はかつて、麻生太郎外相が経済企画庁長官の時に大臣官房企画課の課長補佐としてお仕えしました。この方はこういう時にまったくぶれません。)
確かに、日本国政府の公式見解によれば、李登輝前総統の靖国神社参拝は「政治的活動」にはなり得ません。総理の参拝ですら、政治活動ではないというのが日本政府の公式見解ですから。ましてや、日本国籍すらもはや持たない李登輝さんの参拝は、思想信条にわたること、信仰の自由に関わることですから、それを政府が押しとどめることは日本国に憲法があるかぎり不可能です。
李登輝前総統は、日本での講演で、「自分が戦前に受けた日本の教育や文化について話し、日本は良い国だ、頑張れと伝えたい」とのことです。中華人民共和国として、こんな講演をされた上で、常々反対している靖国神社参拝までされたのではたまらないでしょう。また、長年さまざまな手段を使って行っているプロパガンダが、ただ一度の訪日で突き崩される可能性さえあるため、なんとしても阻止したいことでしょう。
本来、中華人民共和国としては、「憎っくき李登輝に靖国参拝などさせるものか!」とこういう時にこそ全力で反発をしなくてはならないはずです。では、中華人民共和国が、本性を現し猛々しく批判をしたとしましょう。微笑外交が偽りのものであることが誰の目にも明らかになるわけですから、日本の朝野の反応は今まで以上に極めて厳しいものになります。要するに、反日デモをあおり立てるなどした江沢民体制時代の反日外交のつけが回っています。いらない時に強気で出ていますからいけないのです。李登輝さんに比べるとまだまだ甘いですね。
30日の「台湾独立勢力に活動の舞台を与えるべきでない」という中華人民共和国側の抗議も、台湾事務弁公室の李維一報道官という低いレベルによるもの。これ以上高いレベルで抗議をしても、李登輝さんの術中にはまり、逆効果と判断したということでしょうか。
さて、李登輝前総統の鬼手に対する、中華人民共和国の次の一手は何でしょうか?役者が違うという印象がありますが、くれぐれも短気を起こされて、じり貧を恐れてどか貧に陥らないようにご忠告申し上げます。また、李登輝前総統には、次回訪日の際には、ぜひとも伊勢神宮にご参宮くださいますようにお願いいたします。
参考リンク
李登輝前総統来日決定





