4月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領に同席していたコンドリーザ・ライス米国務長官は、「北朝鮮による日本人拉致問題の解決は、北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除するために必要な条件になっていない」、「米国内法に照らせば、テロ支援国家指定は、基本的には米国に対するテロを念頭に置いたものだ」と発言したということが明らかになったと報道されています。
拉致事件は許せません。それに対する北朝鮮の対応にははらわたが煮えくりかえる思いがします。拉致事件は、何よりも人権問題であり、どの国籍の人々が犠牲になったのであれ、テロに他ならないと考えています。特に日本人拉致被害者の解決と北朝鮮による核開発、核保有の禁止がアジアと日本の平和に不可欠な前提条件であるとの思いは、誰もが持つものではないでしょうか。
ところが、これまでの六か国協議において、米国は、北朝鮮に対して「第三国への核拡散がないなら、拉致問題を不問にし、北朝鮮の核保有を認める」意図があるように見受けられます。以前と違って主なアクターが大陸間弾道弾ICBMを持つソ連でなく、アラスカを除く米国本土に北朝鮮のテポドンは届かなく、そもそも北朝鮮に米国を攻撃する意図があるとは思えないことから、米国にとって核問題は人ごとです。この北朝鮮の核の射程の短さなどが原因の非対照性が、北朝鮮が自由に泳ぎ回れる余地を作ってしまっています。
これは誤った宥和政策です。我が国政府は認めたがりませんが、米国による日本に対する明らかな背信であるとともに、日本の自衛隊のイラク派遣が結局いざというときには何の意味もなかったことを意味しています。
これはコンドリーザ・ライス国務長官をはじめとするネオコンサーバティブ的発想を持つ人々が要職についているブッシュ政権が、抽象的なイデオロギー紛争に気をとられすぎて、米国から遠く離れた地域での地域が限定された紛争への対応がおろそかになりがちであることが原因でしょう。
誰か政府与党内に、この問題は、米国にとってのキューバ危機どころではないインパクトを日本にもたらすことを米国政府に説得力を持って話すことができる人はいないのでしょうか。
米国の立場からこの問題を見るとすると、核拡散防止を優先することには彼らなりの合理性があります。欧州に目を向けると、英仏は核武装しており、ドイツには米国の中距離核兵器が配備可能であるため、いかなる欧州内の国の核兵器に対しても抑止力を持っています。彼らの北朝鮮核問題への関心はただならず者国家やテロリストへの核不拡散に絞られるものと思われます。ですから、日本にとっては誤った政策である米国の宥和政策は、米国の欧州同盟国にとっては背信ではありえません。つまり、米国の威信は崩れないということになります。言い換えれば、北朝鮮問題に関しては、今のところ、日本の一人負けだということです。
冷戦期までの米国の戦略は、2正面での紛争に十分対応できることを目標としており、このような宥和政策は戦後の極東でははじめてのことです。歴史を振り返ってみれば、米国は極東に対してのコミットメントはいささか不安定で、振り子のように揺れ動きます。ロシアが日露戦争前に満洲を実質的に勢力圏内に入れても、米国は積極的に動こうとしませんでした。また、逆に、日本の満洲事変以降の動きへの対応も鈍いものがありました。かといって、急にハルノートのようなものを突きつけてくることもあるのですから極めて恣意的な動きをするのが米国の外交です。
我が国の安全保障政策は、国連と日米安保を基軸として、ソ連、中華人民共和国という大国を相手とするドラスティックな動きのみに対処することを考えてきました。しかし、今回のように地域が限定される紛争に果たして日米安保が有効かどうか。もっと具体的にいえば、北朝鮮が核を振りかざしたときに我が国がどのように対処すべきであるのかということは、これまでの防衛ドクトリン(もしあればのことですが)からは演繹的には答が出てこないのではないでしょうか。
北朝鮮拉致・核問題エントリーもご覧ください。
追伸 米ブッシュ大統領が「アベを困らせはしない」という趣旨の発言をしたとの報道がありました。どこからのリークか判りませんが、それが本当なら日本にとってありがたいのですが・・・





